墓場で死者に判決通知?=軽率な裁判所命令が波紋呼ぶ

トカンチンス州ドゥエレ市にある被害者が眠る墓地(17日付G1サイトの記事の一部)
トカンチンス州ドゥエレ市にある被害者が眠る墓地(17日付G1サイトの記事の一部)

 ブラジル中部トカンチンス州の司法当局で不可思議な出来事が発生した。裁判所命令を受けて同職員は、強盗致死事件の被害者である男性に裁判結果を通知するために、男性が眠る墓地に行き、規定通り被害者の氏名を2、3回呼び、あだ名でも呼んだ。予想通り反応はなく、通知先の男性が確かに「死亡」していることを確認し、通知書は未処理となった。17日付G1サイトなど(1)(2)(3)が報じている。
 事の発端となった殺人事件は2022年4月29日、同州南部で発生した。2人組の男が被害者宅にナイフを持って押し入り、携帯電話、テレビ、バイクと現金900レアル(約2万7千円)を盗み、被害者を車に乗せて同市から110キロ離れた川のほとりに連れて行き腹部を刺して殺害、遺体を川に投げ捨てた。遺体は後日、漁師によって発見された。
 今年9月26日、犯人の1人はグルピ第1刑事裁判所のバルドゥール・ロシャ・ジオバンニーニ判事により懲役21年の判決を言い渡された。判決文には「被害者個人に通知されるべきだが、被害者が死亡している場合はCADE(配偶者、尊属、卑属または兄弟姉妹)へ通知されるべき」との記載がある。
 被害者への通知は、有罪判決を受けた刑事事件では一般的な手続き。判決の内容によっては、民事裁判所で罰金を執行され、有罪判決を受けた被告が被害者に支払う可能性があるためだ。この場合、最低賃金の100倍の13万2千レアル(約400万円)に相当する。被害者が死亡している場合、相続権を持つ人が罰金を受けとることができる。
 この判決に基づき、判決の全内容を被害者本人に伝えるための令状が同判事により作成され、裁判所職員カシオ・アントニオ・デ・オリベイラ氏が送達を命じられた。令状には被害者の個人情報や通知の目的が記載されているが、指示通りに向かった先は、被害者の家ではなく、埋葬された墓地だった。
 同判事は「死者に対して通知書は発行していない」とし、「同職員の行動は管轄機関によって調査されるべきだ」と職員のせいにした。しかし実際には判決文には被害者への通知要請があり、令状も発行されている。
 通常、住所とは生活の場所を指すが、被害者が既に亡くなっていることから、判事は墓地を住所として記載したことが問題の発端と報道されている。
 この出来事は司法手続きや規則に対する疑念を抱かせ、常識からも逸脱していることが問題視されている。

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