中東での紛争に伴う緊張が、遠く離れたサンパウロ市のユダヤ教とイスラム教のコミュニティーに暗い影を落としている。迫害の恐怖を訴え、警備を強化する事態に至っていると20日付フォーリャ紙(1)が報じている。
サンパウロ市西部にあるユダヤ系学校の入り口では、ライフル銃を持つ警官が立ち、学校職員の車のトランクや、施設に立ち入る人々を念入りに検査している。ここに通う生徒の大半は、今まで武装した人間を見たことがなく、心理的にかなりの衝撃を受けている。
実業家ファダ・トゥムさん(43)は、7歳の娘ゼナちゃんから「ママ、子ども達は戦争で死ぬの?」と問われ、返事に困ったという。「私はゼナにテレビを見せないようにしているが、彼女はとても執着している。父親がパレスチナ自治区にいるから」と、元夫のいるヨルダン川西岸地区で20年間暮らしたトゥムさんは言う。
イスラエルがハマスに対して宣戦布告して以来、当地のユダヤ教徒とイスラム教徒のコミュニティーのメンバーは、中東のニュースがもたらす潜在的な敵対行為に関する心理的影響から身を守るため、かつてないほどの警戒心と行動の変化が求められている。
特にSNS上で反ユダヤ主義的な投稿が増加しており、こうした脅威に対処するために、学校、博物館、シナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)、その他のユダヤ系施設は警察や民間の警備体制を強化している。
一方で、アラブ系ブラジル人やイスラム教信者は、自分たちの政治姿勢はテロ行為を支持することとは無関係であることを説明するために、講演会や討論会を開催中だ。
双方の指導者らは、緊張の根源は現在の中東紛争の暴力性だけでなく、しばしば誤った情報に煽られ、急進主義が生まれやすいとされる当地の政治環境にも起因していると主張する。SNS上のコメントは反ユダヤ主義の拡大を示す指標であり、政治イデオロギーとの結びつきが強いことから、問題は深刻化する。
公安事務局によれば、一部施設では警察のパトロールが強化され、軍警車両が市内中心部で頻繁に見られるようになった。タルシジオ州知事(共和者・RP)も、パレスチナ関連施設の警備を強調し、コミュニティーの不安を和らげるために努力していると主張している。だが、フォーリャ紙の取材によればイスラム寺院に警察の姿はなかったという。
Fapal(ブラジル・パレスチナ・アラブ連盟)のウアリド・ラバ会長は、「ブラジルのパレスチナ人コミュニティは初めて、戦争に関するニュースに突き動かされ、迫害の本当の恐怖を感じた」と言う。人々は街に出ることを恐れているという。
双方それぞれに、SNS上で広がるフェイクニュースや憎悪のコメントが増加していることに強い恐怖を抱いており、自己防衛のために活動を制限するなど、緊張の高まりに対処する必要に迫られている。