海外日系人大会=「4世ビザ緩和と国籍法改正を」=次世代に期待、5項目の宣言発表

大会宣言を行った平野氏と橘谷氏

 海外日系人協会は10月16~18日、東京都のJICA市ヶ谷ビルにて「第63回海外日系人大会」を開催した。17日にはパネルディスカッションと質疑応答が行われ、最終日にはディスカッション結果を受けた大会宣言が発表された。
 パネルディスカッションは、第1部「期待される新時代のイニシアティブ 日系社会の新たな挑戦」、第2部「共生社会実現に向けての努力と貢献」、第3部「コラボレーションの促進」に分かれて行われた。
 第1部では、コロナ禍中に若手日系人によって行われたICT(情報通信)技術を利用した活動や、在日ブラジル人研究者らによる活動、在ブラジル・ペルーのデカセギ子弟らによる活動が紹介された。
 第2部では群馬県大泉町の村山俊明町長が同町での在日ブラジル人との共生モデルを紹介。また、高齢化した日本人海外移住者らが迎えている苦境の報告や、日本人、日系人が日本国内および海外の世界で活躍するために二重国籍の維持ができるよう国籍法改正を推す意見などが述べられた。
 第3部では国際化、多様性社会実現の手がかりになる世界で活躍する日系人の活動事例紹介が行われた。
 最終日に発表された大会宣言は5項目からなり、橘谷喜屋武(きつたにきあん)エルナン・アルマンド氏と平野恭子氏によって宣言された。
 大会宣言1つ目は「ICTに通じアイデアに豊む新しい日系世代は挑戦を続けます」。各国日系団体は、パンデミックの影響で運営資金確保に苦しんだが、日系新世代はICTを通じて、オンラインイベントを開催し、活動を拡大した。先輩世代の知識と経験、支援を受けながら全世代で力を合わせ、ニッケイ社会の新たな価値創造に向けて進んでいくとした。
 2つ目は「日系と日系以外の人々が連携するニッケイ社会は共生・共創のモデルです」。各国日系社会では、日本文化に関心を持つ人々の参加が増え、従来の日系社会から構成要員の変化が明らかになっている。こうした新たな形の日系社会を「ニッケイ社会」と表記し、日本の伝統文化を次世代に引き継ぎ、地域社会に開かれた活動、貢献をする共生と共創の活動モデルとするとした。
 3つ目は「初期日本人移住者が残した『教育重視』と『相互扶助』の精神を継承することが大切です」。日本における共生社会実現の上で今後問題になるのは「子弟教育」と「高齢者対応」であるとし、初期移住者が残した「教育重視」「相互扶助」の精神を、日本国内を含む各地の日系社会で連綿と継承していくことが大切であるとした。
 4つ目は「日本育ちの次世代を応援します」。在日日系社会はブラジル、米国に次ぐ世界3番目の規模であり、日本で育った若い日系人世代が《アイデンティティを探しながら、葛藤を乗り越え、現在の仕事や活動につなげている経験を共有しました。未知の可能性に挑む日本育ちの次世代を私たちは応援します。多彩なバックグラウンドを持ち、日本の長所と短所を知る若い日系人の活躍は日本社会に欠かせないものとなるでしょう》と強調した。
 5つ目は「日系4世ビザの要件緩和と、国籍法の改正を求めます」。中南米地域の日系社会の若手による訪日を促進するため、日系4世ビザの要件緩和や撤廃を求め、《グローバル化した現代社会において、海外で生活する日本人や、海外で生まれ育った子どもが、日本人・日系人としてのアイデンティティを保ちながら世界で活躍するために、在住国と日本の両方の国籍を保持できるよう国籍法を改正することが必要です。国籍喪失規定(国籍法11条)と国籍選択制度(国籍法14~16条)の廃止を検討いただくよう求めます》などと提案した。

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