ネパール人と覗いた中東カタール〈1〉=人口の9割占める外国人側から見た内情=サッカーW杯や万博開催を支える労働者

ドーハ市内のネパールレストラン「ザ・グルカ」でネパール人の友人たちと筆者

 カタールといえば、昨年はサッカーワールドカップ、またこの10月2日から来年3月までは2023年ドーハ国際園芸博覧会(EXPO)の開催地として国際的な注目を集めている。しかし、同国の現状について他国からは肌感覚で分かりづらい。個人所得年間8万ドル、主要産業は原油と天然ガスの世界有数のリッチな国というイメージが先行するのではないだろうか。本連載は、カタール在住のネパール人たちの案内で、2023年9月20日から10月1日まで見聞した同国で働くネパール人の概観、および伯国産鶏肉の小売り現場や中東で奮闘するラーメン店などについて紹介する。

 「カタールの日常生活にアラビア語は必要ない。英語とヒンディー語が日常会話だ」と首都ドーハ在住のネパール人の友人から聞いていた。カタールについて調べ始めて最も驚いたことは、夏場の日中は、とても外を歩きたくない50度近くなる灼熱の気温もそうだが、それ以上に同国を発展させている住民たちの構成である。
 総人口約300万人の内、首長制で統治者のカタール人は人口の約1割に過ぎず、人口の9割が外国人労働者という社会である。紛れもなくこの外国人労働者が、過去20年ほどのカタールの急成長を国の底辺で支えてきた。

 最も多いのがバングラディッシュ人、フィリピン人、ネパール人、インド人と続き、パキスタン人やアフリカ諸国からの労働者が庶民層の顔である。ショッピングモールに高級車で送迎される黒いチャドルを着た女性やアラブ人のイメージそのままの白い衣装を着てカフェテリアでおしゃべりしながらコーヒーを飲む男性がカタール人だろうと何となく認識できるが、行き交う人々の全体の割合からするとそのようなカタール人は決して多数を占めていない。
 ショッピングモールの店員に出身国を聞くと、「フィリピン」「バングラディッシュ」「ネパール」、タクシーの運転手に声をかけると「スリランカ」「インド」という声がいつも聞こえてきた。ただし、通りを行き交う乗用車は圧倒的に日本車が多い。トヨタ、日産、ホンダ、スズキ、そして、結構レクサスも見かけた。
 現在、カタールには36万人以上のネパール人が生活している。彼らはより良い生活を求めて海外で働き、祖国の家族に送金することでネパール経済に貢献し、また、FIFAスタジアム、道路、建物の建設など、急速な国の発展のためにカタールの基底部分をサポートし続けてきた。
 現地滞在中、カタールを案内してくれたネパール出身のラム・ハリ・サプコタさんと、彼が現在HRマネージャーを務めるドーハの人材供給会社アルラヘーブ社のCEOアショク・タマンさん他、彼らの友人たち、そして伯国からの一訪問者を温かくもてなしてくれた在カタール・ネパール大使館のナレシュ・ビクラム・ダカル大使、および在カタール・日本大使館職員の皆様に、最初にこの場を借りて心より感謝する。
 また、イスラエルでも働いていたネパール人10人以上が、10月7日に発生した複雑な中東情勢に巻き込まれ、犠牲となったことにお悔やみ申し上げる。(続く、取材:大浦智子)

最新記事