1世紀前の葡萄守る伊系住民=南部農家の伝統に伝わる移民史

ヴィルソ・ストラッパッツォンさん(25日付G1サイトの記事の一部)
ヴィルソ・ストラッパッツォンさん(25日付G1サイトの記事の一部)

 ブラジル最南端のリオ・グレンデ・ド・スル州はワインの生産地として有名で、中には100年以上の歴史を持ちブラジル映画の舞台になった家もある。実話に基づいたイタリア系移民のロマンスを描き、1996年のオスカー外国映画賞にノミネートされた映画「O Quatrilho(愛の四重奏)」のロケ地となり、石造の歴史ある建物は、先駆イタリア移民の当時の生活風景を思い起させると25日G1サイトが報じている。
 同州ベント・ゴンサルヴェス市に住むヴィルソ・ストラパッツォンさんは、1880年に曾祖父母によって建てられた家を大切に保存している。1875年に北イタリアのヴェネト州ベッルーノ県から移住した最初の移民だ。同じ土地で持続型農業をするために、牛の糞尿を利用して肥沃な土壌を作り、今もしっかりと維持されている。
 四世代目のヴィルソさん家族も先代から受け継いだ土地、文化、習慣を守り続けている。この豊かな農地を活用して葡萄を栽培し、ジュースとワインを生産・販売する「ストラパッツォン・ワイナリー」は同地域の一大観光名所だ。
 これらの葡萄の木も、100年以上前にヴィルソさんの曽祖父母によって植えられた。イタリア本土から種を持って来たが、当地の土壌に適応せず、最初は栽培に苦労した。幸運なことにドイツ系移民から提供された別の種類の葡萄の種はよく育った。
 この「イザベル」と呼ばれる葡萄種は今日でも収穫されており、長年に渡り家族の生活に根付いてきた。果実は食卓に上がり、自家製ワインを作り、朝食の際にも飲んでいたという。朝8時半からパン、サラミ、チーズ、ポレンタ(トウモロコシを挽いた粉を粥状にしたイタリア郷土料理)など、いかにもワインに合う食べ物が並ぶ。
 当初ワインは家族内での消費のために作られていたが、1992年に一念発起し、観光客向けにワイナリーを開放した。最初は慣れるのが難しかったと、ヴィルソさんは話す。「イタリア人は昼食時に家族全員が集まる伝統があるが、観光客を迎え入れるために、その日常生活のリズムを変えなければいけなかった」とも。
 今では、家族の協力もあって経営も軌道に乗り、地元の他の家族も観光業に参入し、これが「Caminho de Pedra(石の道)」と呼ばれるイタリア移民の歴史を伝える観光ルートが形成された。そこには言葉、建築、農地、家族の歴史が詰まっており、南大河の歴史遺産の一部となった。一帯では、ポルトガル語とイタリアの方言が混ざった「タリアン語」が今も使用されていると言う。
 ストラパッツォン家は長い間自分たちの歴史を守り続け、その使命を今後も喜んで受け継いでいく意志を示している。

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