ドーハのハマド国際空港に到着して入国審査の列に並んで最初に驚いたのは、おそらく南アジア出身者と思われる比較的小柄で褐色肌の男性たちの行列だった。
就労のために到着したと想像でき、国籍は分からなくても、「英語とヒンディー語がカタールでの日常会話」と聞いていたことに、早速うっすらと実感が持たれ始めた。聞き耳を立てて聞いていると「ネパール出身」という会話も聞こえてきた。
審査の順番が来ると、筆者はアジアからの就労者ではない旅行者と認識されたためか、彼らの列とは異なるカウンターに行くように言われ、そこで写真を撮り、どこに宿泊するかを尋ねられた。男性審査官の気に掛かるところがあったようで、別の女性審査官の元へ移動させられ一瞬緊張したが、無事に通過することができた。
旅行直前のしょうゆ騒動
カタールでネパール人の友人夫婦と一緒に料理しようと、お土産にしょうゆを持って行くことにした。このしょうゆ選びが旅行直前に小さなドタバタ劇を引き起こした。
日本で生まれ育った者として、ブラジル産しょうゆの中からより日本の風味のする商品を持って行こうと、気に入った商品をまとめ買いしていた。
ところが、ネット情報で「アルコール入りのしょうゆは持ち込み禁止。現地の日本食店でもアルコール不使用のしょうゆのみ使用が許可」との記述を見かけた。
それで原材料表示を確認すると、アルコールが含まれていた。本当のアルコール飲料ではないし問題ないのではと思いつつ、イスラム教がアルコールに厳しいのは世界の常識であるし、ネット情報で書かれていたのも信ぴょう性を感じ、万が一にも無理に不要なしょうゆを持ち込もうとしたとして入国拒否されても困るため、用意していた商品はもちろん、しょうゆを持って行くのをあきらめかけていた。
しかし、ちょうど旅行直前にブラジルのMNプロポリス社が製造するしょうゆについて同社の松田典仁会長と話す機会があり、「しょうゆはアルコールが入るものですか?」と聞くと、「当社は100%自然製法なので使用していない」との答えに希望を見出した。
日本の風味そのものである同社のしょうゆの原材料表示にはアルコールは含まれておらず、これなら入国できると確信したため数本をカバンに詰めた。
カタールでの荷物検査は入国審査よりも緊張がほぐれ、機械を通してしょうゆ瓶が確認されたようではあったが、「ソースの瓶?」と聞かれ、「はい。日本食に使うソイソース」と答えると、日本人なりアジア人にはよくあるケースなのか、こなれた雰囲気で「OK」と難なくパスすることができた。(続く、取材:大浦智子)