サンパウロ日伯援護協会(税田パウロ清七会長)の定期評議員会が10月28日午前10時半から、同本部で開催された。出席者は評議員22人と理事会メンバー13人で、議題は30分余りで終了した。だが、その後に評議員がサンタクルス日本病院(HJSC)への巨額融資に関する議論を提起し、「全て定款に基づいて合法的に融資は決定された」とする理事会側に対し、評議員からは「もっと広く議論してもよい問題では」との意見があがっていた。
最初に与儀昭雄評議員会会長から、会員規約違反があったとして早川量通評議員会第1副会長の1年間の資格停止が報告された。先亡者に1分間の黙祷が捧げられ、与儀会長は挨拶で「今日は議題にないことは討議できない」と述べ、HJSCへの巨額融資については「すべて合法的であって、批判する点はない」と説明した。
税田理事会会長は「援協は福祉と保健の分野を合せて3400人以上の従業員を抱えるまで大きくなった。それは全て従業員や会員のみなさまのおかげ。今までの困難を乗り越えてきた先人のみなさまにも感謝します。私はより協調的な形で援協を経営し導いていかなければと思っている。理事会全体も同じ考えだと信じている。HJSCの件など、いくつか意見の相違はありますが、全て法律の範囲内で行われてきたとお伝えしたい。理事会で承認され、法務の指導も受けました。論争する必要はないと思う」と述べた。
洲崎順理事会第1副会長が2024年度事業計画案を説明した。発表中、出席者からHJSCへの融資は記載されないのかを尋ねられると、小田セルジオ理事会第5副会長は「23年度の事業報告に記載される」と説明、承認された。
続いて小田第5副会長から2024年度予算案が説明された。収支ともに8億3685万3千レアルで、その約8割が日伯友好病院。設備投資計画案も本部の改修や研修費用や友好病院の新病棟建設費用など1億2452万9千レなども承認された。
加えてエスペランサ婦人会が解散の際、援協に譲渡した不動産の売却の承認が行われた。出席者から「立派な不動産なのに、売却以外に使い道はないものか」との意見が寄せられたものの、「現時点では使う予定がないので売却を提案する」と島袋栄喜財産管理委員長から説明され、最終的に承認された。
議題には「その他」がなく、大西悦雄評議員から閉会直前に「HJSCへの巨額融資について話し合い、その内容を議事録に入れてほしい」との声があったが、そのまま閉会した。
大西評議員は「まず議題に『その他』がないのはおかしい」と意見し、「議事録にきちんと記録してもらわないと困る」と強制閉会に不満を述べた。その上で「コチア、南伯、南銀が潰れ、コロニアに残された最後の宝は援協。これは死守しなければならない。いくらお金があるからと言って、福祉医療団体が融資するのは本筋ではない。危機意識がもっとあっていい」と異議を唱えた。
与儀会長は「融資は理事会で多数決をもって可決されたことで、評議員会でその決定を覆すことはできない。そう定款にある。反対意見があることもよく理解しているが、一度決められたことには協力していただきたい。組織内で争うことは組織を破綻させかねない」と述べた。
税田理事会会長は「ブラジル日報の記事のタイトルは援協のイメージを毀損し、破壊するもの。そんな記事を書かせた評議員がいることは大変残念だ」と何度も述べ、融資については「全て援協の法務部との協議によるもの。HJSCの建物と土地を抵当にしている」と説明した。
菊地義治評議員(名誉会長)は「組織に亀裂が走らないように結束を。大きな問題はみんなでしっかり議論して、お互いが納得できる形に持っていくことが大事。もっと自由に議論をした方がよいのでは」と述べた。
園田昭憲理事会第2副会長は「援協が内部から崩れないように、もう一回一心同体でやっていきましょう」と呼びかけ、佐々木弘一理事も「コチア、南伯、南銀は内部から潰れた。援協が100年後に日系の誇りとして残ってほしい。そのためには皆が経営に危機意識を持って臨み、力を合わせていきましょう」と語った。
最後に、菊池評議員から既に振り込まれた融資金額と残金に関して質問があり、残金に関して「融資反対の人は立ってください」と呼びかけると10人が立ち、「賛成の人は立ってください」というと誰も立たなかった。援協側では《賛成である人が立たなかったのは、すでに定期評議委員会が閉会し、与儀会長が不在だったため。残念ながら投票は、議事録に入れることは定款上不可能であった》と説明している。
巨額融資の件は、評議員役員だけが参加した理事会との8月の会議で承認された。だが一般評議員を含めた形の話し合いが一度もなかったため、全員が参加できる定期評議員会で議論を求める声があがったようだ。