到着翌日から滞在期間中、ネパール人の友人たちが「ゲストだから」と、一日一食はドーハ市内のネパール料理店をはしごさせてくれた。ネパール料理は若干割高のため、ネパール人たちも日頃はいつも通っていないという。日常的に庶民が気軽に利用しているのは、割安かつメニュー豊富なインド人経営のレストランやティーショップだという。それで、こちらも一日に一食はインド人経営の飲食店に通っていた。
以下、カタール通貨リヤルはQRと記す。1QRは40.69円(2023年9月22日現在)。
カラックと言われるインドでいうチャイが一杯1QR(40円)、コーヒー一杯が2QR(80円)、シンプルサンドイッチが3~4QR(120~160円)ほど。ブラジルや日本よりも安く感じ、コーヒーが甘かったことを除けば、おいしいく満足な軽食だった。
作りたてのフレッシュジュースも十分といえる豊富さで、小サイズが8レアル(320円)前後。ブラジル式の砂糖ではなく、ハチミツを加えるアボカドジュースが健康的に思った。
暑さを避けるドライブスルー
「米国や日本のドライブスルーは時間短縮のためだけど、カタールのドライブスルーは暑さ避けのためにある」という。
大通り沿いのティーショップ前に停車すると、店員が車まで注文を聞き取りに来て商品を運んできてくれた。
9月下旬でも日中の気温は40度前後の日があり、エンジンをかけて冷房のきいた車内で朝食をとってしまう方が労働者にとっては便利である。エンジンをかけてクーラーをつけていると気になるガソリン代だが、滞在中の価格は1リットル2.1QR(約84円)であった。
昼食や夕食にはチキンビリャニ(インドのチキン焼き飯)が10QR(400円)、グリルチキンが12QR(480円)ほどで食べられ、日本の女性なら2人で一皿でも良い量だ。水代と合わせて一食500円でお腹いっぱいになる。昨今のサンパウロ庶民のバールの一食が30レアル(870円)ほどなので、比較すると、年間個人所得が世界トップクラスに数えられるリッチな国でも、庶民の食費や外食費は比較的お財布に優しい設定である。
変わらないピタブレッド価格と水代の安さ
カタールには政府が一般労働者を守るためにとっている有名な政策がある。それは、サンパウロでもアラブ人移民の影響で珍しくなくなった食材、ピタブレッド(625g、10枚か5枚入り)の値段が1リヤル(40円)に統一されていることだ。
この価格は他の物価が上がっても10年以上変えられていないという。パンと水があれば生き延びられるという考えからである。サンパウロでは同じパンが現在650g15レアル(450円)ほどである。
水代は500mlのペットボトルが飲食店で2QR(80円)、スーパーなら0.50~0.80QR(20~32円)ほどで、ペットボトルに印刷された「カタリ・プロダクト(カタール製)」の文字とカタール国旗がおいしい水への自信をのぞかせた。
市内の移動に便利な日本製車両のメトロも、一回2QR(80円)で、市内バスは無料。日本国内の交通費の高さや最低賃金からすると安くはないサンパウロのメトロ代を思い出した。
国ごとに決められた外国人労働者の最低給料
必要な生活費の価格がサンパウロと比較すると割安なのは、外国人労働者の生活を守るためでもある。外国人労働者は出身国ごとに国家間で最低給料が決められており、例えば、現在はフィリピンが月1500QR(約6万1千円)、ネパールは月1000QR(約4万円)で、所得税はない。ネパールの場合、基本給に食費300QR(約1万2千円)と住居費が助成され、交通費も支給される。(続く、取材:大浦智子)