「ニンジャ(忍者)ラーメン」(連載第11回)を訪ねた時、新店舗をオープンすることもあって、総料理長の三原さんは新しい厨房スタッフを探していた。
一緒に店を訪ねたネパール人の友人は人材供給会社の仕事にも携わっていることから、ドーハに暮らすネパール人ネットワークの中からすぐに思い当たる人物を紹介していた。
また同時に、ネパール本国から厨房スタッフの仕事を希望する人からの連絡も届いていた。
ネパールから求職した男性(30)は日本で約5年、レストランの厨房スタッフとして働いた後、一旦ネパールに戻って新しい就職先を探していた。タイミングよくカタールのラーメン店の求人があることを知り、すぐにマッチングされたという。
通信アプリ「ワッツアップ」で30秒ほどの日本語での自己紹介ビデオと、自身のスキルを知ってもらうための包丁で野菜を切るビデオが送られてきた。両者はその後、オンラインで面接をすることになったという。
口コミに加えて、SNSが海外での就職活動や採用に活用されている時代である。この男性のような人材は、日本食の知識もある上、異文化で働くことにも慣れており、日本だけでなく海外の日本食店にとっても貴重な存在である。
「外国人に上手く頼る」カタール
ネパール人には親日家がとても多い。両国の関係は6世紀にまで遡るといい、古くから仏教を通じて交流があったという。ネパールを訪問する日本人観光客も少なくなく、また、草の根レベルやJICAの国際協力で活動してきた日本人に対して敬意が持たれていることも大きい。
ネパールはインドや中国といった大国に挟まれた陸の孤島だ。日本も海を挟んで大国に接する孤島であり、対人関係でも両者の自己主張は控えめで気遣いや察するという性質が似ている。ネパールはアジアで日本やタイと並んで植民地になったことのない国でもある。
在カタール・ネパール大使館のナレシュ・ビクラム・ダカル大使は、「BRICSとして急成長するインドや中国と隣接するネパールは、両国と同じように発展を支えられていく必要がある」と話す。BRICS以外でも急成長するカタールやアジア諸国で働いてきたネパール人は、各国の発展を支え、本国への仕送りによってネパールも支えてきた。
日本は少子化による労働力不足を補うために、外国人労働者の受け入れを解決策の一つとしている。日本の出入国在留管理庁が発表した2022年末の在留外国人数で、6位のネパール人(13万9,393人)は5位のブラジル人(20万9,430人)に次ぎ、一年間での増加率は43%増であった。現在の円安が続けば、ブラジル人の増加率が下がり、ネパール人居住者の方が上回る可能性がある。
同じ外国人でも永住が認められた移民が発展させたブラジルとは異なり、「外国人に上手く頼る」という現地で聞いたカタールを表す言葉が印象に残り、ドーハの町に毎日定刻に穏やかに響くコーランと外国人労働者の溶け込んだ風景がその言葉に説得力を感じさせた。(終、取材:大浦智子)