「死をタブー視せず気軽に語ろう」――サンパウロ市近郊スザノ市の葬儀会社で3年間働くサンタナ・ルーカスさん(23)は、遺体の搬送、遺族対応、死亡証明書手続きなどの日常業務の中で見てきた「死」について、軽妙でユーモアを交えた動画を配信して注目を集めている。1日付アジェンシア・ムラル・サイトなど(1)(2)が紹介している。
葬儀屋は悲しみに満ちた仕事のように見えるが、そればかりではない。ルーカスさんのSNSは、インスタグラムでは7万8千人以上、TikTokでは26万人近いフォロワー数を持つ。
コンテンツ制作には十分注意を払い、故人や遺族の個人情報や画像、強烈なシーンは伏せている。「不快に思う人もいるが、死は普通のことで、私たちは心を開いて話さなければならない。一部の人は不謹慎で無礼だと批判するが、僕はこの考えを変えたいんだ」と話す。
彼の目的は、業界の舞台裏を気軽に共有し、正しい情報を提供し、死がより自然に扱かわれるべきテーマであると示すことだ。「僕はすでに父、いとこ、祖母を亡くしているから、デリケートで悲しいトピックであることはよく理解している。でもこれをタブー視して話しにくくすればするほど辛くなる」と動画制作の意図を説明する。
この職業に就くことを思い立ったのは、父親を亡くした12歳のときだった。葬儀屋の存在を知り、葬式を準備する彼らの姿に釘付けになり、かっこいい職業だと思ったという。その強い興味は大人になっても消えず、ルーカスさんはその道に進んだ。
SNSでの発信について当初上司からの賛同を得られず、仕事に支障をきたす可能性があることに対する懸念があったが、同僚からは好意的に受け入れられた。「どんどんやって試行錯誤を繰り返し、少しずつ冒険していったんだ」と振り返る。
8月に投稿され、380万再生を記録した動画でルーカスさんは、「葬儀屋は公平であるべきで、故人が生前に何をしたのかを詮索したり判断したりすべきではない」とコメントする。「家族が愛する故人と最後の貴重な瞬間を過ごせるよう、我々はご遺体を整えることに集中するのだ」と動画内で説明している。
インフルエンサーとして活躍する現在では、この分野に参入したいと考えている人々にアドバイスをし、既に業界で活動している人向けにコースを作る予定だという。
「僕の投稿を見た多くの人が、この職業の実態を知り、重い雰囲気ばかりではないことを知ってくれた。興味を持つきっかけとなったんだ」と話す。彼のコンテンツを通じて死に対する新しい考え方や視点が生まれ、それに共感する人々が増えていることを実感していると語った。