《記者コラム》「世界最大の音楽都市」には選ばれたけれど

テイラー・スウィフト(Instagram)

 ひと月ほど前のニュースの中に、サンパウロ市が「世界最大音楽都市に選ばれた」というものがあった。これは米国アラバマ州の国連関連団体が選んだもので、イギリスのマンチェスターなどに勝って選ばれたものであった。その理由は、「国際的な音楽イベントが盛んで、多様な音楽を市民が推奨しようとする試みが見られるため」だとか。
 これは素直に驚くと同時に納得もできた。コラム子は以前から、サンパウロ市での国際音楽イベントの急増について言及してきた。2012年から開催され、サンパウロ市の音楽イベントのイメージを決定づけてきたロラパルーザをはじめ、昨年から始まったプリマヴェーラ・サウンド、ロック・イン・リオのサンパウロ市版の「ザ・タウン」。そこに加えてMITAやC6フェスト、F1のブラジル・グランプリに合わせたGP WEEKなどが目白押しだ。
 また、以前は少なかった国際的な大物の単独公演も増えている。最近はもっぱら、今週末のリオ公演を皮切りにツアーを始めるテイラー・スウィフトの話題で持ちきりだ。
 サンパウロ市に住む音楽ファンとしてはかなりの恩恵を感じているし、感謝もしている。だが、その反面、これは以前にも書いたことだが、不安も感じている。それは、イベントそのものの質の低下だ。
 いくらイベントが増えたからといって、世界に存在するアーティストの数が増えるわけではない。割り算の分母が大きければ大きいほど、目玉アーティストの数も分散されてしまう。
 その兆候はすでに現れている。来月3、4日に開催のプリマヴェーラ・サウンドは「大好評を得た昨年に比べて弱い」との下馬評となっている。今月行われたGP WEEKに当初プリマヴェーラ出演が有力視されていたアーティストたちが奪われなければ、かなりの大イベントになっていた。
 そのGP WEEKもサッカースタジアム・アリアンツパルケを2日も借り切って行った割りには、閑散とした状況で終わってしまった。F1と音楽を組み合わさなければならない必然性も今ひとつ理解されているとは言い難い。
 プリマヴェーラは本家のスペイン・バルセロナと10年開催契約を発表したばかり。こうした潰し合いを避ける手立てを整えて欲しい。
 一方、今や20万人の動員を誇るロラパルーザも、発表されたばかりの来年3月の出演者が「過去最低」との声がネット上で目立っている。ロラ一択しかフェスティバルがなかった時代は豪華出演者を独り占めでき、それで人気を高めてきた。サンパウロの老舗フェスとなった今、その貫禄を保つことができるか注目されている。(陽)

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