ブラジル味の素社は8日、アマゾン地域の伝統調味料トゥクピ(キャッサバ根の絞り汁を発酵させた液体調味料)を製造するスタートアップ企業マニオカ社への投資計画を発表した。味の素グループにとって日本国外のフードテックへの投資は初となる。
ブラジルにおける調味料のトップブランドを有する同社は、2022年に34億レアルの収益を目指している。ポートフォリオ多様化を期して、新規性の高い事業を外部のスタートアップ企業と結びつけるアジノラボを設立した。
マニオカ社は、アマゾン産の天然の料理食材であるマンジオカ(キャッサバ)や「アマゾンのバニラ」の異名を持つクマル、唐辛子などを生産、開発、販売している。
今回の投資で、マニオカ社の製品に、味の素社独自の味覚設計技術でおいしさを、品質管理技術で安心・安全に磨きをかけるという。また、味の素社全国84件のディストリビューターネットワークを使い、マニオカ社製品がこれまで普及していなかった地域へも販路を広げる。
マニオカ社は2014年、広報担当のジョアンナ・マルティンスさんと弁護士のパウロ・レイスさんがアマゾン料理の味を広めることを目指して設立した。パラー州ベレンに本社があり、ブラジル北東部の13自治体と45世帯で、原料採取から生産までを行っている。アマゾン地域の先住民由来のトゥクピ・アマレーロとトゥクピ・プレットを主力に、調味料やソース、粉物や豆類が代表的な製品である。
ジョアンナさんは「私たちの目標は、アマゾンの食材を『珍しい』ものから、ブラジルの消費者が日常的に使うものにすることです」と話す。マニオカ社には現在150の販売拠点があり、2024年末までに1500拠点に増やすという。
中村茂雄ブラジル味の素社社長は「アマゾンの生物多様性を尊重するというマニオカ社のミッションが、味の素グループの志である『アミノサイエンスで、人・社会・地球のWell―beingに貢献する』と共鳴した」と話す。
中村社長は、成長する健康食品市場のニーズに応え、アマゾンの伝統的な調味料を、生物多様性とサステナビリティを考慮しながら人々においしい食事を楽しんでもらうことが、「Well―being」、「健康」につながると考える。
同社ではトゥクピ・アマレーロを使用したライスボールやブリガデイロ、しょうゆと似た風味を持つトゥクピ・プレットでブラジルで人気のしめじバター炒めをアレンジするなど、新レシピの開発も進めている。今後もアマゾン由来の原料を活用したおいしい調味料や加工食品の開発を進めていく。
味の素グループの日本国外でのフードテックへの初投資は、同社にとっても非常に重要なマイルストーンとなっている。