リオ出身のバイク配達員カイオ・ベニシオさん(43)は、アイルランドで23日に発生した不審者による子供5人襲撃事件を阻止し、その勇敢な行動が同国メディアで注目され、レオ・バラッカー首相から勲章を授与された。27日付オ・グローボなど(1)(2)(3)が報じている。
二児の父親であるベニシオ氏は、家族を養うためにアイルランドにデカセギ中で、首都ダブリンでアプリ配達員として働いている。
現地紙のインタビューでカイオさんは、ダブリン中心部の住宅街にあるにぎやかな広場パーネル・スクエア・イーストで、男がナイフで子どもを襲っているのをバイクで配達中に目撃。犯人が刃物で5歳の少女の胸を数回刺しているのを見て、カイオさんは「本能的にバイクを降り、ヘルメットで犯人を殴った」と語っている。
犯人は現行犯逮捕となったが、この件で子供や女性を含む5人が負傷し、一部は重傷を負っていると報じられている。
この事件後「犯人は外国人だ」という噂が広まり、同時の夜には約500人がダブリンでのデモに参加し、店舗の略奪や車両の放火が発生した。
翌日にはバラッカー首相はこの抗議デモは「アイルランドに恥をかかせた」と述べ、政府が極右の犯行と断定したこの事件を非難した。ここ数年アイルランドでは、国内の不動産危機に煽られ、特定の極右勢力による移民反対の言説が拡大している。
アイルランドのマイケル・マーティン副首相も記者会見で「最初に助けに入ったのはブラジル人の労働者だった。この襲撃事件は、直接的には移民の問題とは関係ない。犯罪はどの人種や肌の色にも属さない」と付け加えた。
そのカイオさんの勇敢な行動がアイルランドのメディアで注目され、彼を称賛するクラウドファインティング(インターネット等を通じた寄付活動)が行われ、約36万ユーロ(193万レアル、5860万円)を集めた。
キャンペーンのタイトルは「カイオ・ベニシオにビールを買ってあげよう」であり、彼の行動を高く評価したもの。同キャンペーンでは、攻撃を受けた子どもと保護者のための寄付も行われた。
カイオさんは「考える余裕なんてなかった。本能的に体が動いた。人々は移民に抗議しているが、私も移民だ。助けたのは私だ」と強調した。