「ベネズエラの背後にロシア」=ブラジル北部侵略の可能性も?!

3日、国民投票会場でのマドゥーロ大統領とシリア夫人(Foto: instagram @nicolasmaduro)
3日、国民投票会場でのマドゥーロ大統領とシリア夫人(Foto: instagram @nicolasmaduro)

 ベネズエラで3日行われた国民投票で、隣国ガイアナのエセキボ地域併合に関して96%の賛成票を獲得したとして戦争開始の懸念が高まる中、「ベネズエラの後ろにロシアがいる」とするジャーナリスのアレシャンドレ・ガルシア氏の発言を11月30日付ガゼッタ・ド・ポーヴォ(1)が報じている。
 ベネズエラのマドゥーロ独裁政権は以前からロシアと強力な関係を築いており、ガルシア氏は「ベネズエラはロシア製の武器や潜水艦、戦闘機はもちろん、軍事教練を受けており、対ガイアナとしては十分な武力を備えている」と論じている。拡張主義のロシアは、ベネズエラが米国や西側諸国の経済的な圧力に対抗するための協力を深め、共同でエネルギー市場を安定化させる取り組みを推進している。
 今年4月には、ロシア外相セルゲイ・ラブロフ氏がベネズエラを訪れ、米国の制裁に対抗するためにモスクワが「できる限りの努力」を行うと宣言していた。(2)ベネズエラ外相との会談では、両国の経済的および政治的な協力を拡大するための協定に署名し、国際支払いの新しい仕組みについても協議した。これはSWIFTに代わるものであり、ドルの使用を回避するための取り組みの一環だ。
 10月には、ロシアのアレクサンドル・ノヴァク・エネルギー相が、石油輸出国機構(OPEC)正加盟国のであるベネズエラとのロシア石油協力の重要性を強調していた。(3)ベネズエラは世界最大の確認石油埋蔵量を有しており、ロシアは世界第2位の石油輸出国だ。
 このようなやり取りでロシアからの後ろ盾を得た後、マドゥーロ大統領は今回の国民投票実施を発表した。
 来年の大統領選挙は民主的に行うと米国と約束して輸出規制を緩和してもらった手前、野党の大統領候補に人気が集まる中で選挙戦を行う前に、右派左派関係なく国民の大半が賛成するこの領土問題を提起して幅広い賛同を得ることは支持率向上に有利に働くと読んだようだ。
 ガルシア氏は「ロシアはベネズエラに足がかりを持っており、そこを経由して(ブラジル最北端)ロライマ州や国境にあるラポサ・セラ・ド・ソル保護区を通過して、ブラジル領土を侵略することを容易にしている。これは驚異的な奇襲だ」との見方を表明し、この国境地帯に先住民保護区を設けるべきだと決定した最高裁の判断を批判した。
 エキセボ地域は石油資源が豊富なだけでなく、滝などの水資源も豊富で、ブラジル側からしてみると、そこに水力発電ダムを建設すればロライマ州に電力を供給できる。同州はアマゾン川の北側で、南側の大規模送電網に繋がっていないため、常に不安定な電力供給体制に悩んでいる。
 ブラジル北部のアマパー州は両国と国境を接しており、最北端にごく小さな守備部隊しか持ってない。国防相は11月30日、その部隊を倍増にすると発言したが、ガルシア氏は「兵士の数を70人から140人に倍増するのはほとんど無意味である。外務省はブラジル北部の平和を維持するためにやるべきことがたくさんある」とくぎを刺した。

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