在サンパウロ日本国総領事館は11月8日、サンパウロ市モカ区のサンジュダス大学講堂にて、公立ろう学校に通う小中学年児童を対象とした和太鼓演奏会を開催した。聴覚障害を抱える生徒とその保護者を中心に340人が参加し、和太鼓の空気を震わす大きな響きと大胆な演奏による躍動感を通じて日本の伝統音楽文化を体験した。
演奏会にはプロフェソーラ・ネウザ・バセット学校(初等部)とヘレンケラー学校(中等部)の生徒らが参加。軽度から重度の聴覚障害を抱える生徒のほか、自閉症や脳性麻痺、視覚障害を併せ持つ生徒のため、開催協力を行った東京都立大塚ろう学校支援のもと、進行には特別な配慮が施された。
開会挨拶に立った小室千帆首席領事は手話を用いながら「今日は日本文化を存分に満喫してください。皆さんの心に今日の思い出が残り、日伯のつながりがより強くなることを願っています」と語った。
演奏はサンパウロ州タウバテ市を拠点に活動する民謡グループ「海藤」が行い、力強く和太鼓が叩かれると、生徒らは不思議そうな表情や驚きの表情を浮かべて演奏を見つめた。
ヘレンケラー学校の元生徒で、現在は同校教師を務めるネイヴァルド・ゾヴィッコさんによれば「和太鼓は他の打楽器と振動がまったく違う」という。
生徒らは次第に和太鼓のリズムに合わせて太ももを叩くなど楽しむそぶりを見せ始め、中には手話で「和太鼓の振動で鼓動が高まる」と気持ちを表す子もいた。
教員の中には「こんなに喜んでいる生徒の姿を初めて見た」と涙する人もいた。
演奏後には、和太鼓体験ワークショップが行われた。
演奏会に参加したエロイーザ・テノリオちゃん(6歳)は「すごく楽しかった」と満面の笑顔で感想を語った。
和太鼓演奏を担当した海藤洋平さん(36歳、2世)は「事前に聴覚障害について勉強してきましたが、耳が聞こえない人相手に演奏するのは今回が初めてでとても緊張しました。子供たちが楽しんでくれている姿を見て心にジーンと染みるものがありました。和太鼓を通じてこうした機会に巡り合えたことに感謝しています。これからもこの活動は続けていきたいです」と話した。