在サンパウロ総領事館が11月8日に開催した公立学校に通う聴覚障害児童向け和太鼓演奏会。ブラジルの障害者児童への社会的支援は乏しく、国際文化体験を得られる機会は稀で、今回の演奏会に参加した子供たちの多くにとってはこれが初めての日本文化体験になったという。
日本文化の体験機会提供というだけでも十分に意義のある演奏会だったが、特筆すべきは、これまでも日伯の文化的繋がりの大きな担い手となってきた和太鼓が、空気を震わす大きな響きと演奏の躍動感を通じて、ブラジルの聴覚障害児童に日本の伝統音楽を『体感』させるという他の楽器や音楽では難しい画期的な役割を果たして見せたことだろう。
果たして和太鼓演奏会に参加した聴覚障害児童らの笑顔は、関係した大人たちの心を強く打つものだった。
開催に尽力した在サンパウロ総領事館の菊池暁子領事は「今回の企画がベースになって、日本とブラジルに新たな関係が生まれれば」と期待を語る。演奏を担当した海藤洋平さんも「耳が聞こえなくても、和太鼓の響きでコミュニケーションがとれることを実感できた。いつか聴覚障害を持つ人たちによる和太鼓グループを作りたい」と新たな可能性に胸を膨らませている。
様々な障害を越えて響く和太鼓の音が、ブラジルでますます大きくなることを願わずにいられない。(ア)