「私がそこにいる限り、中央銀行は閉鎖しない」――10日、アルゼンチン大統領にハビエル・ミレイ氏が就任した。同氏が中銀総裁に指名したサンティアゴ・バウシリ氏は8日、そう明言した。この指名は上院承認を経て正式なものとなる。中銀の廃止はミレイ氏の選挙公約のひとつだった。9日付オ・グローボなど(1)(2)(3)が報じている。
現地紙「ラ・ナシオン」によると、ミレイ政権で経済相となったルイス・カプト元中央銀行総裁の経済チームに所属し、同大臣の親しい友人であるバウシリ氏は、アルゼンチンの金融政策を担当する組織のトップとして、中銀総裁在任中にペソ通貨発行を終了(ドル化)させるとの明言も避けたという。
バウシリ氏は「中央銀行の独立性を取り戻す」ことを約束し、金融当局の独立性とはどういう意味かを説明した。「中央銀行の独立性とは、同行が国庫に融資しない時に保たれる。現在、すでに経済省に資金を供給している状況にある」と述べ、自身の管理下では金融当局を同様に機能させないことを再確認し、前政権とは正反対の政策を実行すると述べた。
これは中央銀行が独自の判断による以外は、政府発行の国債引受けをしないことを明言している。国債を通して過度に政府に資金供与することで、政府の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯止めが掛からなくなり、悪性のインフレーションに繋がったという認識に基づいている。
その結果、通貨や経済運営そのものに対する国内外からの信頼も失われる。すでにその状態であり、今までの政権で過度にそれが行われたとの反省から、今回の発言となった。
新政権発足後の初勤務となる11日に重要な経済発表があるかどうか尋ねられたバウシリ氏は、「当局の出入りや、職務の引き継ぎには時間がかかる」ため、わからないと答えた。
現地テレビ局「IPノティシア」に対して、同氏は現在の公式のドルの為替レートがバランスを欠いていると主張したが、理想的な値をどう考えるかについては明言を避けた。
バウシリ氏は、アルベルト・フェルナンデス前政権下で4年間中央銀行を率いていたミゲル・アンヘル・ペッシェ氏の後任となる。
サンアンドレス大学経済学部を卒業後、バウシリ氏はキャリアの多くを米国で過ごした。JPモルガン銀行に11年間勤務し、資本市場の資金調達と金融リスク管理の経験を積んだ。その後、ドイツ銀行に移り、9年間、アルゼンチンを含む複数の南米諸国の主権債務の管理を担当した。
マウリシオ・マクリ大統領時代の16年から17年まで財務次官を務めた。その後、19年12月まで財務長官を務めた。