ブラジルは国連機関に対し、自国の海洋境界線を変更するよう求めている。これらの海域は希少鉱物資源が豊富である上、同地域の地質的特徴から、国の一部であると認識されれば、ブラジルに経済的なチャンスをもたらす可能性があると、12日付CNNブラジルなど(1)(2)が報じている。
サンパウロ総合大学(USP)の最近の研究で、南大西洋の海底に沈んでいるリオグランデ海膨(ERG、「海膨」は海山よりも緩やかに広い範囲で盛り上がった海底の地形)として知られる古代の熱帯島に関する詳細が明らかになった。この火山島の一部は5千万~4千万年前には海面上にあり、森に覆われていたという。
リオグランデ海膨については、2013年にも、陸地でしか組成されない花こう岩が大量に見つかり、大西洋上に大陸があった証拠と報じられていた。
ブラジルの戦略的な興味は、同海域における鉄マンガン地殻や多金属団塊などの希少鉱物資源の存在にある。これらの地殻や団塊には、バッテリーやソーラーパネル、及び、グリーンエネルギー時代に不可欠な技術革新の基礎となる、コバルトやニッケル、プラチナなど、現代技術に不可欠な元素が豊富に含まれている。
リオグランデ海膨までの距離はブラジル沿岸から約1200キロで、国連海洋法条約(UNCLOS)で設定された排他的経済水域の200海里(約370キロ)を超えている。
ブラジルはこの海域は自国が持つ大陸棚の自然な延長であると主張し、国際的承認を大陸棚限界委員会(CLPC)に求めている。これが認められれば、リオグランデ海膨を含む海底の鉱物資源と潜在的な富の探査権を持つことになる。
エネルギー転換に必要な重要物質は将来、世界的に不足することが予想されており、深海採掘の重要性が高まっている。多金属団塊は非常に価値があり、海底に点在しているため、潜水艇による収集が比較的容易だ。パイプを使用して吸い上げ、それを海面に浮かべた船に運ぶことで採掘される。ただ、一般的な採掘と同様、環境に損害を与える可能性がある。
国際エネルギー機関(IEA)の報告書によれば、これらの鉱物の需要はエネルギー転換が進むと共に急増している。市場規模は過去5年間で2倍になり、2022年には3200億ドルに達した。
また、この地域は商業価値の高い魚が豊富で、22年のブラジルの魚の輸出は15%増加し、史上最大となる2380万ドルを記録した。また、新たな油田発見の可能性も高い。
国際大陸棚委員会は、19年3月、大西洋南部地域に対するブラジルの大陸棚拡張を承認した。同委員会は現在、赤道縁辺の大陸棚に関する提案を審査しており、24年に承認の見通し。翌25年は、リオ・グランデ海膨がある東部地域の審査が開始される見込みと報じられている。