サンパウロ日伯援護協会(援協、税田パウロ清七会長)は12月4日、本部会議室で臨時評議員会を開催した。同会はサンタクルス日本病院(HJSC)への巨額融資問題に対する白熱した質疑応答が約2時間に渡って行われ、援協の定款改正が行われることなどが発表された。この臨時評議員会は、理事会からの招集ではなく、評議員本人によって招集された前例のない臨時総会だった。理事会側から一般の評議員に対して巨額融資について深く説明されず、一部評議員が不満を覚えていたことで開催が呼びかけられた。
「定款上、融資には何ら問題はない」と税田会長
臨時評議員会の議長は坂和三郎評議員会第2副会長、書記は川合昭第1書記が務めた。評議員からの質問や意見などに対し、HJSCへの融資決断に関わった理事会や評議員会が返答した。
評議員からは、公益団体である援協は設備投資、科学的研究など直接医療に関連した融資はできるが、HJSCへ融資の場合は、負債支払いが目的の金融業務のようになり、規則法律違反になるのではとの疑問が呈された。
これに対し、税田理事会会長は援協総合定款第4条第2項《本援護協会は、その目的を達成するために保険(医療)を目的とする組織と協定を結び、契約し、集合し、指導し、補佐し、指示し、統治し、奨励し、財政を含む援助を提供することができる》を取り上げ、融資の合法性を主張した。
森エリオ理事は、慈善団体への資金援助の合法性に関して、定款第4条に加え、2021年12月21日に公布された補完法187条第1項に《その収入、財源および余剰金は、すべて国内において、組織目的の維持と発展のために使用すること》と記されていると述べ、国民の健康の追求に取り組んでいるHJSCは援協の理念と同じであるため、「財政援助に対し法的な障害はない」との見解を示した。
総合定款第68条《審議会、理事会監査役会のメンバーが、単独で、あるいは共同で、本援護協会の利益以外の行為に対して、いかなる書類の保証や担保を提供することを明示的に禁止する》に違反するのではとの疑問に対し、税田会長は「定款にそのような義務は規則されていない」と答えた。
現在の定款では理事会が意思決定を行うことになっていると、与儀昭雄評議員会会長からも説明が行われた。
これに対し、理事会の決定に評議員会は承認するだけの現体制に不満の声が相次いたことから、税田理事会会長は2024年に同件に関する定款改正を行うこととした。定款改正案を募る期限は定まっておらず、今後、特別委員会が設けられる。
融資決定への外的圧力に対する疑惑
税田会長は、評議員からの「援協は公益団体として、HJSCの融資に対し、権力や圧力、役員の特権などの少数意見によって資産運用を間違ってはならない」との指摘に対し、「内的及び外的圧力はなく、理事会が自ら決定し、評議委員会役員とともに承認された」と強調した。
税田会長は総領事館やJICAからの協力要請に関して「融資の決断を左右するものだった」と話した。日本病院設立時には皇室の御下賜金(ごかしきん)があったほか、援協は21~23年にJICAを通じて日本政府から6300万レアルのコロナ禍助成を受けた。
与儀評議員会会長は「初めて話を持ち掛けられた時は融資に反対だった」と明かし、「融資はとても大きな金額。だが、金額の他にも社会的な関係がある。JICAや総領事館はなぜ援協に来たのか。みんな援協がどれだけ財産を所有しているか分かっている。(中略)もちろん融資金額は大きいが、社会的コストは測り切れない。財産を持っているのに、融資を断ってHJSCが潰れたら、どれほど援協に響くだろうか。みなにも考えてほしい」と意見を変更した理由を説明した。
評議員から「HJSCは以前から経営不振が続く状態と伺っている。一会員からすると援協が共倒れになることがとても心配。みんなの援協として、融資決断を慎重に考えてもらいたい」とHJSCの経営状態を踏まえ、巨額融資に対する不安が述べられた。
川合第1書記からHJSCで特別委員会が設けられ、経営再建案の説明機会が設けられたとの説明が行われ、「最初は私も反対だった。(中略)みんな喧嘩するほどだった。与儀さんの言う通り、みなでよく考えて決断を行った。最後は信じるしかない」と熱弁を振るった。
HJSCに援協から経営監視団を派遣することが提案されたが、与儀評議委員会会長はサンミゲル・デ・アルカンジョ病院の経営も行っていることから、HJSCも同様にしたら「それこそ援協に手が回らず潰れてしまう」と論じた。同アルカンジョ病院も大きな累積赤字を抱えている。
与儀評議員会会長は、「反対意見があることはいいことだが、それにより援協の正常性を乱すのは望ましくない」と指摘。「この問題が今日明確になり、会議の終わりには、皆が同じ方向に目を向け、手を取り合い結束して帰ることを願う」と臨時評議員会の出席者に訴えた。