チリ=国民投票で新憲法案再否決=ピノチェト時代の憲法継続

新憲法案に反対するチリの人々(17日付G1サイトの記事の一部)
新憲法案に反対するチリの人々(17日付G1サイトの記事の一部)

 南米チリで17日に国民投票が行われ、ピノチェト将軍の独裁時代に制定された1981年憲法を改める2度目の憲法案が55・6%の反対票により、否決された。1度目の憲法案は左派中心に、今回のは保守派中心に作成され、共に国民から否決された。ボリッチ政権への支持率も低下してきたと同日付けポデール360など(1)(2)(3)が報じている。
 この投票には1500万人以上のチリ国民が参加し、96%の開票が完了した時点で確定した。
 アウグスト・ピノチェトの軍事独裁政権時代(1973ー1990年)に制定された1981年憲法に代わる憲法案の是非を問う国民投票は、同国にとって2度目であった。
 新憲法案は右派政治家や保守派によって主導され、中絶反対、私営年金制度と医療制度の擁護といった、主に右派の立場を反映した内容だった。その一方、この憲法案はジェンダー平等や先住民の権利に関する具体的な取り決めが不足していると指摘されていた。
 今回も憲法改正を否決する結果が出たことを受け、左派の現職大統領であるガブリエル・ボリッチ氏は(自政権での)「憲法プロセスは終了した」とコメントし、今後は他の緊急課題に焦点を当てることを示唆した。国民投票の結果は、ボリッチ氏の政権下での2度目の憲法案否決となり、同氏の支持率低下を如実に示すものとなった。
 憲法改正の動きは2019年の大規模なデモと抗議活動に端を発した、不平等や社会的な課題への対応を求める声が高まったことを受けたものだ。最初の憲法改正案は左派主導で進められ、環境保護や権利の拡大を図った進歩的な内容だったが、これに対して賛否両論が激しく対立し、国民の62%により拒否された。
 その後、再度の試みで選ばれた憲法制定会議は、より保守的な立場からの提案を行い、それが今回の新憲法案となった。
 新憲法案に関する過去の議論や投票プロセスが長期化し、国内で様々な立場からの激しい論争が巻き起こったため、国民の一部は疲弊感を抱いていたが、投票率は予想以上の84%と高く、国民の憲法改正に対する強い関心が窺えたと報じられた。

最新記事