パネトーネはブラジルのクリスマスシーズンに欠かせない、イタリアの伝統菓子だ。ドライフルーツやチョコチップを練り込んでドーム型に焼き上げた甘い発酵パンは、老若男女から愛されている。その歴史を2019年12月25日付BBCブラジル(1)が紹介している。
パネトーネ誕生については諸説あるが、最も有名な一つは15世紀末に「イル・モーロ」と呼ばれたミラノ公、ルドヴィーコ・スフォルツァ氏のコック助手を務めていた「トニ」という青年が生みの親だとの説だ。
クリスマスの晩餐用に作っていたデザートを誤って焦がしてしまい、急きょ発酵させていたクリスマス用のパン生地を使い、代替えスイーツを完成させた。この「パン・トニ(トニのパン)」が「パネトーネ」としてイタリア全土で人気を博すようになったというもの。
また、中世イタリアでは元々、12月24日の特別な夜に大きな砂糖入りのパンを食べる儀式があり、貴重な具材や香辛料が加えられていたため、この存在がパネトーネの発展に寄与した可能性があるとみられている。
パネトーネが欧州全土に広まったのは20世紀初頭のことで、ミラノのパン屋のオーナーであるアンジェロ・モッタ氏がもたらした革新的な技術によるものだった。1919年、モッタ氏は伝統的なレシピに酵母を加え、紙製の焼き型で包んだことで、パネトーネは従来の平らな形状から、より膨らみのあるドーム状に変化した。
このレシピは他のパン屋にも広まり、1925年に別のパン職人ジョアッキーノ・アレマーニ氏によってアレンジされ、職人間の激しいパネトーネ競争が世間の注目を浴び、ついに工場生産されるまでになった。
イタリア発祥のパネトーネは、世界中で広く受け入れられ、特に南米ではブラジルやアルゼンチン、ウルグアイなどの国での普及が著しい。いずれもイタリア移民が多く入った国で、そこで彼らが自国の伝統を伝え、いつの間にか現地のクリスマスの風習として定着した。
世界で最も多くのパネトーネを生産している会社は、ブラジルのバウドゥッコ社で、日本にも大量に輸出される。1952年にイタリア人移民のカルロ・バウドゥッコ氏によってサンパウロ市で設立された同社は、ブラジルと米国に6千人以上の従業員を擁し、年間8千万個のパネトーネを生産している。
同社は今年、パネトーネの特別ボックス「Panettone Ricetta Originale Luigi Bauducco」を18日に販売開始した。(2)価格は400レアル(約1万2千円)で、3千個の数量限定。70年にイタリアから持ち込まれた酵母菌を利用し、伝統レシピに忠実に従い、材料にもこだわった一品だ。パッケージにはシリアル番号入りでオルゴール付き。クリスマスの期間中の特別な贈り物として注目を集めている。