米国の民間格付機関「S&Pグローバル・レーティング(以下、S&P)」は19日、ブラジル国債の信用格付を12年ぶりにBBマイナスからBBに引き上げた。この決定の背景には、税制改革が承認され、経済成長の見通しに改善が見られたことなどがあるが、ブラジルの財政赤字は依然、高水準であることなどから投資適格級から2段階下に位置し、依然として「投機的格付け」とみなされている。同日付G1サイトなど(1)(2)(3)が報じている。
S&Pは声明で、ブラジルが過去7年間にわたって実施してきた積極的な政策実践を評価した。とりわけ、15日の税制改革法案承認は、2016年以降続けられてきた広範な構造改革及びミクロ経済政策の一環と見なされており、マクロ経済の安定性定着に役立ち、生産性の向上に寄与すると期待されている。
一方、経済成長の見通しについては、改善が見られるが、依然として穏やかかつ弱い状態であり、財政面の弱さがブラジルの信用の品質を制約し続けていると指摘した。ただし、ブラジルは他国からの需要に応じる強力な生産力を有しており、外部市場でのポジションが強力であることや、将来的な財政改善と経済安定に寄与する金融政策の採用が期待されることを考慮し、安定的との見通しを維持した。
しかし、S&Pは公共支出への対処は依然として「硬直的で非効率的」で、改善がほとんど進んでいないと指摘。その結果、財政赤字が恒常化して金融セクターの財源を圧迫し、ブラジルの経済成長を部分的に鈍化させていると説明する。また、公共政策の不適切な実施があれば見通しと格付を引き下げる可能性があり、これが財政の悪化や期待以上の公共債務増加につながるおそれがあると警告した。同時に、政治の不確実性や混乱が外国からの直接投資を減少させ、結果的に、外部経済でのブラジルのポジションを悪化させる可能性があるとも指摘した。
逆に、財政の安定化が予想よりも早く進むか、過去数年間に実施された構造改革とミクロ経済政策が長期的な経済成長を促進するなら、格付を引き上げる可能性もあると述べた。
フェルナンド・ハダジ財相は、目標達成のための歳入増加策が承認されることを期待している。S&Pによれば、ブラジルの状況にプラスに働く要因は、良好な外国取引、柔軟な為替レート、独立した中銀によるインフレ目標体制である。
S&Pと並ぶ大手格付会社の「フィッチ・レーティングス」は7月、S&Pが前向きな見通しを示したことを受け、ブラジル国債の格付をBBマイナスからBBに変更したが、15日には当面はBBで維持する意向を表明。「ムーディーズ」も、投資適格級から2段階下回るBaa2で、安定との水準を維持している。