アルゼンチンのハビエル・ミレイ新大統領は20日、同国の経済規制緩和し、輸出を促進するための緊急政令(DUN)を発表した。これは、衛星インターネットサービスや民間医療の規制緩和、労働市場の柔軟化、一連の国内法の廃止など350以上の規制を修正または廃止し、経済の再建を目指すもの。だが専門家からは憲法違反や法的懸念が指摘され、一部の国民からは反対デモが拡大している。また中国は同国への資金提供を停止し、経済不安の一要因となっている。同日付G1サイトなど(1)(2)が報じている。
ミレイ大統領は、経済安定化を図るために緊急措置を講じる必要があると主張し、ペソ切り下げや公共事業停止など、経済危機を封じ込めるための抜本的な経済改革「チェーンソー計画」を12日に発表した。この中に公共支出削減が含まれており、これが国内総生産(GDP)の5%に相当すると述べていた。
この政令により、国内法の多くが修正または廃止され、国有企業を株式会社に転換し、民営化プロセスが進展する見通しだ。
しかし、これらの措置には憲法学者や専門家からの懸念の声が寄せられている。この緊急政令が議会承認を経ずに即時発効されることに対して、憲法違反の可能性があると指摘している。一部の専門家はミレイ氏が議会の権限を侵害し、最高裁の判例にも合致していないと主張している。
この政令に対する国民による抗議が強まり、反対デモは数千人規模に拡大している。特に、同政令には解雇手当の大幅な削減や労働者の権利制約などの労働改革が含まれ、これに反対するデモ隊と警察の一部で衝突が発生している。
これに加え、ミレイ氏就任直後の19日、中国政府はアルゼンチンに対する65億ドルの資金提供を停止したとの報道があった。これは、アルベルト・フェルナンデス前大統領と習近平国家主席が10月に合意した資金提供取引の一環であった。この資金は、国際通貨基金(IMF)からの債務総額440億米ドルに対する支払いの一部に使用されていた。
ミレイ氏はかねてから中国との関係を断つと発言しており、中国側はミレイ氏の大統領就任とほぼ同時に中止措置に踏み切り、さっそく政権に圧力をかけているとみられる。
「ブラジル中国文化交流会議所」顧問を務めるなど親中派で知られるモニトール・メルカンチル紙編集局長のマルコス・デ・オリベイラ氏は20日付同紙(3)で、「アルゼンチン国民による今回のデモは、2001年12月当時のフェルナンド・デ・ラ・ルア元大統領とドミンゴ・カバロ経済相に対する抗議活動を記念するもの。デ・ラ・ルーア氏は非常事態宣言でデモを鎮圧しようとしたが続き、弾圧により27人が死亡した。閣僚らは19日に辞任し、21日には同氏がヘリコプターで大統領府から逃走した。大統領辞任後、アルゼンチンはデフォルトに陥った。中国が65億米ドルの融資枠停止とのニュースを考え合わせると、同じような事態はそう遠くない出来事かもしれない」とデモを肯定化、中国の圧力で政権が崩壊する予言的コラムを書き、国民からの選挙で選ばれたばかりのミレイ政権を「独裁政権」と呼んだ。