19日、米国コロラド州の最高裁がドナルド・トランプ氏に対し、2021年1月6日に起こった議会議事堂襲撃事件を扇動したとして、来年の大統領選出馬を認めない判決を下した。
このニュースは衝撃と共に瞬く間に全世界を駆け巡った。ただ、コラム子にとってみれば、「やっと、こういうしかるべき判断を出す裁判所が現れたか」という気持ちの方が強かった。むしろ、こうした司法判断がトランプ氏にこれまで起こってこなかったことの方が不思議でならなかった。とりわけそれは、ここ1年にブラジルで起こったことと比べればなおさらだ。
ブラジルでは今年の1月8日に三権中枢施設襲撃事件が起こった。この時、ボルソナロ氏は米国に滞在し、直接襲撃を煽ったわけではなかった。だが、大統領選が行われる前からの数々の選挙法違反の嫌疑をかけられた末、現時点で二つの罪状で8年間の出馬禁止処分を言い渡されている。
確かにボルソナロ氏の場合、トランプ氏とは異なり、票集計以前のキャンペーンの時点から選挙法違反と捉えられかねない行為を自分から行っていた点は否めない。
だが、支持者たちの選挙結果への不満、怒りを煽った点で言えば、圧倒的にトランプ氏が上回る。ボルソナロ氏は選挙に敗れた後、沈黙を続け、その間に支持者たちは抗議活動を続けていたが、トランプ氏の場合は自分から率先して自分が怪しいと思う州の票の数え直しや訴訟を行った。さらには、州の開票責任者、しかもそれが自分の所属する共和党の人物であったにもかかわらず自分に有利な結果が出るよう脅迫した疑惑を持たれたり、21年1月5日には集会を開き、自らの口で翌日の襲撃を煽るような言動を行っている。
ボルソナロ氏は国際的な虚報を拡散した嫌疑で8年間出馬を禁止されたが、民主主義や社会的暴力に関し、より危険なのはボルソナロ氏とトランプ氏のどちらだろうか。
米国人は「国民に人気のある人物を選ばせない自由に抵触する」という主張をジャーナリストの次元でもよく行っている。だが、人気があったら犯罪までもが帳消しにされるのか。しかもそれが全世界の人が見ている前で公然と行われたにもかかわらず。米国人の持つ「自由」の概念にコラム子は首を傾げずにいられない。
もっとも、米国の大統領選の選挙システムは選挙人制。仮にコロラド州でトランプ氏が出馬禁止になっても、全国538人いる選挙人のうちコロラド州の選挙人は9人にすぎない。もう数州、コロラドのような州が出ないとトランプ氏には影響がないであろうが。(陽)