「訪れた場所で次々に災難が」=能登半島周り羽田帰着の矢田さん

 「もうビックリですよ。私たちが訪れた場所で次々に災難が起きて。新年早々こんなことが起きて、日本はどうなってしまうのでしょうか…」―ブラジリア日本語普及協会理事長の矢田正江さん(78歳、長崎県出身)は家族5人で昨年12月26日まで20日間、訪日旅行した。元旦に大地震に襲われた石川県能登半島北部の和倉温泉にも2泊し、羽田空港からブラジルに帰ってきたばかり。本紙の電話取材に応えて、そう深くため息をついた。
 元旦に起きた能登半島地震では2日午後3時現在で死者57人、3万人以上が避難という大災害になっている。そして翌2日、東京・羽田空港では日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機が衝突するという、まさかの事故が発生した。
 矢田さんは、「孫と娘婿が『雪を見たことがない』というので、能登半島北端に行けば見られるのではと思い、和倉温泉を選んだ。到着した日は暖かかったが、翌日は急に冷えて粉雪が降る雪景色となり、皆大満足。孫は涙を流して喜んでいました」という。和倉温泉のある七尾市は地震被害で5人が亡くなった特に揺れのひどかった地域の一つだ。
 更に「レールパスを利用して、JR七尾線の観光列車『花嫁のれん列車』にも乗りました。内装外装も本当に美しく、夢のような時間を過ごさせてもらいました」と思い出す。同列車の外装は北陸の伝統工芸である輪島塗り・加賀友禅・金沢金箔などの北陸の伝統工芸品をイメージしたものになっている。
 矢田さんは「初めて能登半島を訪れました。もし1週間ズレていたら、私たちが被災者になっていたかもしれません。とにかく被災地の皆さんには、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。本当に心が痛みます」と述べた。

県人会が被災地支援を検討

 金沢市に住む親族の安否を確認したというブラジル石川県人会の武部清美エリーナ会長は、本紙の電話取材に対し、「突然の出来事で、とても驚いています。寒いし、電気も水もない状態にある被災者の皆さんの様子を報道で見て、心配がつのるばかり。早く復旧することを祈っています。理事会全員が母県支援活動を希望しており、寄付集めなどの詳細を決定するために会議をなるべく早く行うことを予定しています」と回答した。

スキー場で冷静に対応したアルゼンチン2世相川さん

アルゼンチンの日系2世・相川亜海(あみ)さんが「(建物から)出て下さ~い」とお客さんに指示をしながら撮影した動画の一部

 一方、アルゼンチン・ブエノスアイレス在住の相川知子さんの次女の亜海(あみ)さん(21歳)は、日本が冬の間、長野県白馬のスキーリゾートでアルバイトをしている関係で、今回の地震を体験した。白馬でも震度5を記録し、「怖かった」と連絡があったという。
 スキー道具をレンタルする部署で勤務中に大きな揺れを感じ、同僚も「どうしよう?」と戸惑っている中、亜海さんは「外に出てください」とその場でお客さんにも呼びかけた。建物はゴンドラと直結しており、万が一、ゴンドラが倒れたら建物も巻き添えになると咄嗟に判断した。
 「怖かったけど、お客さんも守らなければならないし、必死だったの」と相川さんに語ったという。

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