2024年は、元旦の能登半島地震、2日は羽田空港で日本航空機と海上保安庁の航空機の事故と、思いがけない出来事で始まった。寒さの中で避難所暮らしを余儀なくされている方や亡くなられた方を思うと胸が痛み、「こちらは無事」との知らせに安堵する日々だ。
世界に目を向けると、イスラエル軍による攻撃で苦しむガザ地区でも、1日に一部の戦車が撤退し、子供用の予防接種ワクチンが送り込まれたとの報道があり、ほんの少し、愁眉を開いた(1日付G1サイトなど(1)(2)参照)。だが、ベイルートで2日に起きたイスラム組織ハマスのリーダー殺害により紛争がレバノンに及ぶ可能性が高まったとの報道には懸念も広がった(2日付アジェンシア・ブラジルなど(3)(4)参照)。
大規模災害や紛争に関するニュースの前では無力感さえ覚えるが、今回はほんの少しの清涼剤ともいえる出来事を紹介したい。
それは、1日未明にリオ市バラ・ダ・チジュッカ~タンケ間のバスに乗った乗客達が、大晦日から元旦にかけての年越し行事の間も働いている運転手のジョン・ロペス・デ・ソウザ氏(35)のためにカンパを募り、贈ったという話だ。
1日付G1サイト(5)によると、最初にソウザ氏に手渡された額は86レアルだったが、賛同者はその後も続き、最終的には168レアルに達した。
家に残っている家族を思いながら大晦日の夜8時から元旦の朝6時まで働き続けたソウザ氏は、思いがけない贈り物に胸を熱くし、「最良の年越し」との喜びに満たされた。2日朝にはカンパを呼びかけた乗客らとも再会し、「私の人生を変えてくれた」と感謝。今後も交流を続けたいとの思いも伝えたという。
2日付G1サイト(6)によると、カンパを呼びかけた乗客の一人はソウザ氏について、「彼は満面の笑みを浮かべて働いており、私達の心を動かした」とし、自分達の行為は彼の謙虚さ、素朴さ、プロ意識に敬意を表したものだったと語った。
運転手の笑顔が乗客の心を動かし、乗客の思いが運転手の心を満たすという出来事は、街の片隅で起きた一幕に過ぎないが、決して裕福と言えない、否、むしろ貧しい地区で起きた心豊かな出来事は人の心を揺さぶる。
今年の新年の挨拶のメッセ―ジには、花柄に扇子という図柄に「すてきな一年になりますように」と書き込まれたものがあった。
どんなに気を付けていても、大変な出来事や事故は起きるし、別離や苦難、悲しみも経験するだろう。だが、笑顔や思いやりを忘れず、自分を含む全ての人に「すてきな一年を」と願うことは誰にでもできるはずだ。新しい年が喜びや慰めなどで彩られた「すてきな一年になりますように」。(み)