ASEAN=貿易額が1千%急伸=緊密さ増す南南交易

ASEAN加盟国の国旗(ASEAN公式サイト)
ASEAN加盟国の国旗(ASEAN公式サイト)

 ブラジルと東南アジア諸国連合(ASEAN)間の貿易が驚異的な成長を遂げており、2002年の29億米ドル(約4228億円)が22年には340億米ドル(約5兆円)に急伸。貿易額の伸びは1072%にも達したと2023年12月29日付ブラジル247サイト(1)が報じている。
 東南アジア10カ国から成り、総計6億5千万人以上の人口を有すASEAN地域は、ブラジルとの貿易パートナーシップを強化しており、米からハイテク製品に至る、様々な分野で連携を深めている。
 23年1〜9月を見ると、ブラジルとASEANとの間の貿易で生じた黒字額は、ブラジルの貿易黒字(730億米ドル)のほぼ1/4を占めており、その緊密な関係が窺える。昨年12月には、ブラジルとASEANの分野別協力連合が、安全保障、経済、文化などの分野における今後5年間の共同の行動計画を盛り込んだ「実践的協力分野」と題する文書を発表し、両者の緊密な関係を強調した。
 ASEANは世界第5位の経済力を誇り、GDPは3兆米ドル(約14・5兆レアル)に達している。同地域は人口増加率が世界で最も高く、ブラジル産の肉や大豆、その他の食品といった農産物の消費が増加している。
 対外貿易の学位を持つ研究者で、各国と東南アジアとの関係を調査する「メンテ・ムンド」プロジェクト創設者のヴァルテル・ペイショット氏は、東南アジアとの関係強化に関し、半導体分野で既にブラジルと提携関係にあるベトナムとの交渉開始に加え、昨年末にシンガポールとメルコスール間で締結された自由貿易協定も重要な一環となっているとし、これにより、関税障壁や非関税障壁の低下が期待されていると説明した。
 南南貿易の強化は従来の西側諸国による経済支配への対抗と位置づけられており、G7諸国の信頼性低下や経済・投資への制約を受け、新興国が経済の主役となり、世界の経済体制が変わる可能性が高まっている。
 「今日、世界で最も急速に成長している国は南米ガイアナであり、インドは不可避の大国としての地位を強化。インドネシアは50年までに5本の指に入る経済大国になるために必要な条件が整っている」と説明した。
 ASEAN主要加盟国のひとつのインドネシアは、人口2億6100万人のほぼ90%がイスラム教を信仰する世界最大のイスラム教国だ。ブラジルハラール食肉(誕生から死までイスラム教の戒律に従って生産される食肉)の販売を許可された食肉処理場の数を年々増やしており、食肉部門は成長の可能性が大きい。
 23年の年初9カ月間を見ると、東南アジアにおけるブラジル製品の主要市場はシンガポールで、輸出総額は62億米ドルに達している。他にもタイやマレーシアなどとの貿易が拡大しており、エンブラパによる植林技術の輸出やバイオテクノロジーを活かしたグリーンプロジェクトなど、様々な分野でのプロジェクトが進められている。
 ペイショット氏は文化面でのASEANとの協力の余地にも言及。「文化はあらゆる交渉の出発点であり、相互理解を深めるためには努力が必要だ。東南アジアに対しては、エ〝エキゾチック〟というイメージを払拭して、それぞれの美しさと歴史的な独自性に焦点を当てる必要がある」と強調した。
 同氏はまた、パンデミックにより、国と国との間での取引や経済的な連携においても、単一の相手に依存するのではなく、複数の顧客やサプライヤーとの関係を築くことが重要だと指摘した。また、21世紀の経済ダイナミズムの主役は新興国であり、新たなチャンスには事欠かないと強調した。

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