60日間の非常事態宣言発令中の南米エクアドルのグアヤキルで9日、国営テレビ局「TCテレビシオン」のスタジオが武装集団によって襲撃され、スタッフらを人質に取った。その様子が生中継で放送されるという衝撃的な展開となり、国内外から注目を浴びている。9日付テラ・サイトなど(1)(2)(3)が報じている。
この襲撃は、国内で最も恐れられている犯罪派閥の一つである「ロス・チョネロス」のリーダー、ホセ・アドルフォ・マシアス・ビジャマル受刑者が脱獄し、ダニエル・ノボア大統領が非常事態宣言を発令した2日後に発生した。
フードで顔を覆い、銃を持った複数のグループが生放送中のスタジオ内に侵入し、床に伏せるように指示。現地紙「ウニベルソ」によると、犯人らはテレビ局入り口の受付に爆発物を置いて侵入し、人質にも爆弾のようなものをチラつかせて脅した。
番組の司会者の首に拳銃を突きつけて制圧する様子や、銃声のような音も生々しく放送された。国家警察は緊急事態に対処するために専門部隊を出動させ、13人の容疑者が逮捕された。
さらに同日、グアヤキル大学で武装盗賊集団による別の侵入事件も発生した。SNSで共有された映像には、武装した男たちに追われて逃げ回る大勢の学生の様子が映っている。
2025年に行われるはずだった大統領選が前倒しされたことで、2023年8月に大統領候補だったフェルナンド・ビジャビセンシオ氏が選挙運動中に公然と射殺されたことが、治安悪化の引き金となった。それから刑務所内での暴動が一層激化した。
こうした混乱のさなか、7人の警察官が誘拐され、爆発事件や治安部隊との衝突などが起こり、教育省は12日まで全国で対面授業を停止する措置をとった。
9日には、グアヤキル市でブラジル人のチアゴ・アラン・フレイタスさん(38)が誘拐される事件も起こった。同氏は現地に3年間住んでおり、シュラスカリア(ブラジル式バーベキュー店)の経営者であった。
息子のグスターヴォさんはSNS上で事件の一部始終を語り、家族が身代金の一部を支払ったものの、残りの金額が足りず絶望的であると嘆き、視聴者に対して「どんな金額でも歓迎する」と寄付を呼びかけた。
ブラジル外務省はチアゴさんの家族と連絡を取り、「発生した状況を地元当局と調査する」と報告した。
非常事態期間中は治安の維持に軍と警察が動員され、夜間の外出が禁止される。ノボア大統領は国内の22の犯罪組織をテロリストと宣言して対策を強化すると表明した。