エクアドル国軍に鎮圧指令=コロンビアから犯罪組織が移動?

エクアドル軍(10日付CNNサイトの記事の一部)
エクアドル軍(10日付CNNサイトの記事の一部)

 南米エクアドルで治安が極端に悪化していることを受け、ダニエル・ノボア大統領は9日「国内武力紛争」宣言をし、犯罪組織をテロ集団と認定して軍隊が制圧作戦に乗り出すことを明かした。10日付CNNサイト(1)が報じている。
 これは9日にグアヤキル市で発生した武装集団によるテレビ局での襲撃事件の直後に、ノボア大統領がXで発表した。8日の非常事態宣言と外出禁止令に追加されたものだ。
 エクアドル政府は「国内武力紛争」の存在を宣言した政令111号令の本文中で、7日に脱獄したホセ・アドルフォ・マシアス・ビジャマル受刑者率いる「ロス・チョネロス」を含む22の犯罪組織を「テロリストおよび非国家交戦勢力」として位置付けた。ノボア氏は「私は国軍に対し、これらの集団を無力化するための軍事作戦を実行するよう命令した」と述べた。
 政令111号令は、治安部隊が組織犯罪に対抗するために国内に即座に動員され、介入することを意味する。この措置は「国内の主権と領土の完全性を維持するために、国際的な組織犯罪、テロ組織、非国家の交戦者に対抗するため」としている。
 この措置は国軍に「国際人道法を遵守し、人権を尊重しながら、特定勢力を無力化するために軍事作戦を実施する」権限を与えている。
 同国憲法の第164条によれば、大統領は「侵略、国際的または国内の武力衝突、深刻な内部の動揺、公共の混乱、または自然災害の場合、国全体または一部に非常事態を宣言することができる」とされている。
 10日付G1サイト(2)によると、エクアドルはかつて「平和の島」(治安の悪い国に囲まれた平和な国の意)として知られていたが、2016年から劇的に変化した。同年にコロンビア政府と革命的武装軍(FARC)との和平協定が結ばれ、同国では麻薬カルテルが撲滅された。
 そのため、同麻薬組織がエクアドルに移動したようだ。逆にエクアドルはそれまで非常に安全だったため、犯罪に対する専門的な公共安全策を欠いていた。
 コロンビアのすぐ隣に位置するという地理的な要因によって、この動きは促進された。また太平洋に面した約2200kmもの海岸線を持つ同国は、南米から米国や欧州への麻薬取引の主要な経路の一つとして、麻薬組織には魅力的な立地だった。
 18年以降、犯罪による死亡事件がみるみる増加し、23年には同国史上最悪となる10万人あたり46・5人に達した。これは政治的な舞台にも波及し、大統領候補を含む政治家が暗殺されるなど、深刻な影響をもたらしている。
 グアヤキル在住のブラジル人政治コンサルタント、アマウリ・シャマロ氏は、「メデジンとカリの両犯罪カルテルが国家を実質的に支配していた80年代のコロンビアと同じような状態が、現在エクアドルで起きている」とし、これは政府にとっては緊急の課題であり、迅速かつ包括的な対策が必要だと警鐘を鳴らした。

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