アルゼンチンは、高インフレと経済の停滞により、スタグフレーションの脅威に直面している。これは、国内における特定の経済的および政治的な要因が組み合わさった結果だと、10日付テラ・サイト(1)などが報じている。
ミレイ氏は昨年12月の大統領就任演説で、公共支出の急激な削減を通じて国内にスタグフレーションが生じる可能性について警告していた。スタグフレーションは、経済が停滞しているにもかかわらず、インフレが高いという異常な状態を指し、様々な要因が組み合わされて引き起こされる場合がある。
教育調査研究所(Insper)のオットー・ノガミ教授によると、主な特徴は、インフレ率の高さ(昨年11月までの12カ月間の累積は160・9%)と経済の停滞で、失業率とインフレ率の関係の欠如なども挙げられる。
「金融・財政政策がインフレ抑制や経済成長の刺激に失敗し、スタグフレーションを引き起こすことがある。伝統的に、経済停滞(経済成長が低く、失業率が高いことが特徴)は低インフレと共に起こる傾向があり、その逆は起こらないため、この現象は非典型的なものだ」と説明する。
アルゼンチンがスタグフレーションの脅威に直面している要因の一つは慢性的な高インフレで、これに加えて高い税金負担、過剰な規制、不確かな投資環境などの要因が、経済成長の鈍化や停滞を引き起こし、雇用創出と持続可能な成長を困難にしている。また、構造的・政治的な問題も深刻で、公共セクターの非効率性、汚職、政府ごとに変わる経済政策が投資家の信頼を損ない、必要な改革を難しくしている。
同国は多額の対外債務を抱え、国際金融公約の達成に課題を抱えており、スタグフレーションに対抗するための効果的な財政・金融政策を実施する政府の能力が制限されている。さらには、同国の経済が主にコモディティ輸出に依存しているため、国際市場での価格変動の影響が大きく、経済の不安定性を助長しているという。
「アルゼンチンのスタグフレーションに対処するには、これらの問題に包括的に取り組む必要がある。それには経済政策とガバナンスの幅広い分野において、大幅な改革が必要になるかもしれない。しかし、これらの課題は複雑で相互に関連しているため、迅速かつ単純な解決策を見出すことは難しい」と説明した。
10日付インフォ・マネー(2)によると、ミレイ氏は大統領就任後に〝苦い薬〟とも言える大胆な政策群を発表したが、その副作用が現れており、厳しい現実にさらされている。
ミレイ氏の就任以来、中央銀行は40億ドル近くの外貨準備を蓄積し、現地株価指数S&Pメルヴァルだけみれば、民営化交渉によって国営石油会社YPFの株価が上昇したことを受け大幅上昇を続けている。
だが、インフレ率は12月だけで30%近くに達し、昨年累計では200%を超えるとの予想も。当選当初の11月中頃まで好調だった国債価格は下落に転じ、市場には新規国債売り出しへの警戒感が広がり始めた上、通貨ペソの再下落も起き、投資家の慎重な姿勢が目立ってきた。
政策が良くても、議会の多数派工作ができなければ実現は難しく、その政治力の欠如が今ではより明らかとなっているとの声も出ており、予断を許さない状況が続いている。