南米エクアドルで麻薬犯罪組織による暴動が多発し、ダニエル・ノボア大統領による「国内武力紛争」状態が宣言されるなど、治安の悪化が騒がれる中、グアヤキル市で誘拐されていたブラジル人チアゴ・アラン・フレイタスさん(38)が10日夜、国家警察の誘拐対策部隊によって解放された。グローボ局の取材に対して、誘拐の手口や監禁状況など31時間にも渡った恐怖を語った。15日付G1サイトなど(1)(2)(3)(4)が報じている。
サンパウロ州出身のチアゴさんはエクアドルに在住3年で、シュラスコ(ブラジリアンバーベキュー)店を経営。車の運転中に突然襲撃されたという。「前の車が急停止して、男たちが私の車に乗り込んできて、引きずり下ろされた。犯人らは『ロス・ロボス』と呼ばれるギャングの一員だと言っていた。何度も殴られて動けない状態になり、手足を縛られ、目隠しされた。監禁場所は居間、台所、バスルームだけの小さな家で、私は台所の床に置き去りにされた。私にはもう逃げ場はないと思った。ギャングたちはいとも簡単に人を殺していたから」と説明した。
チアゴさんによれば、犯人は銃やナイフで何度も脅し、家族や友人の連絡先を聞き出し、金を要求するメッセージを送り始めた。チアゴさんの解放を求めて、最初に誘拐犯と交渉を試みたのは、サンパウロ市に住む弟エリキさんだった。弟は「最初は恐怖で半信半疑だった。兄の残酷な映像が映し出され、状況を受け入れるしかなかった。最初の要求は身代金だけで8千ドルと言われた」と振り返った。
チアゴさんの息子であるグスターヴォさんによれば、犯人はグアヤキル市に住む家族にも3千ドルを要求した。家族は少なくとも1100ドルを誘拐犯に送金したが、残りが払えなかったため、絶望感を感じていた。
警察により解放された時、チアゴさんは「二度目の人生を与えられた」ような気分になった。「囚われた瞬間はまったく泣かなかったけど、解放されたときは泣いた。一連の恐怖の記憶が一気によみがえったんだ」。日常生活を取り戻すことに努めていると言うが、安全のために3人の息子たちをブラジルに帰国させるつもりだと語った。
エクアドル国内は麻薬犯罪組織との武力紛争状態にある。ノボア大統領が9日に発表した政令には、22の犯罪組織を「テロリストおよび非国家交戦勢力」として位置付け、チアゴさんを誘拐したとみられる「ロス・ロボス」もこれに含まれる。
8日に非常事態宣言が出されて以降、警察と軍隊は連携して全国で治安維持を強化し、同日には千人以上が逮捕されたと、エクアドル政府は発表した。
また同日に、少なくとも七つの刑務所で、計158人の看守と20人の事務員が受刑者らによる人質となる事件が発生していたが、13日の夜に職員全員が解放された。