ブラジル人ブロガーでジャーナリストのパトリシア・レリス容疑者(29)が米国司法省から電子詐欺、個人情報窃盗、および70万米ドル(約1億円)相当の金融詐欺の容疑で指名手配され、連邦捜査局(FBI)の逃亡者リストに載った。彼女はブラジルでも政治家に対する告発を行っており、紆余曲折が激しい経歴が改めて注目を集めている。16日付エスタード紙など(1)(2)(3)が報じた。
米国バージニア州当局によれば、パトリシア容疑者は外国人顧客に対して弁護士資格者を装い、米国の永住権や市民権の取得を仲介すると嘘をついて、見返りに高額な費用を受け取った。
被害者からの支払いは自宅購入の頭金、トイレのリフォーム、クレジットカードの返済などの個人用途に流用していた。告発された犯罪の量刑を合わせると、最高32年の禁固刑に処される可能性がある。
パトリシア容疑者はかつて、政治家への告発や急激な政治的転向で、ブラジル時代にも話題になった人物だった。ブラジリア出身、大学ではジャーナリズムを専攻、卒業後に軍に入隊した。保守的で反フェミニズム的な立場を取り、ブラジルの政治的な動向に関与。特にボルソナリズム(ボルソナロ主義)と結びつきを深め、前大統領三男エドゥアルド・ボルソナロ(自由党・PL)と男女関係があったと明かしていた。
2016年に右派マルコ・フェリシアノ下議に対して強姦未遂、セクハラ、および暴行の罪で告発を行った。その際、彼女はフェリシアノ氏の首席補佐官であるタルマ・バウエル氏に監禁されたとして、同氏も告発した。裁判では証拠不十分となり、告発は却下された。
その直後、彼女は保守から左派の立場に転向して17年に労働者党(PT)に加入。彼女はSNSで何千人ものフォロワーを獲得し、選挙区をブラジリアからサンパウロに変え、18年の下議選挙に出馬したが、議席を獲得するための最低得票数を得られず、敗北に終わった。
19年の初め、彼女にSNS不正疑惑が浮上し始めた。彼女の選挙キャンペーンに携わった12人のグループから債務不履行で告発されたが、その頃には彼女はすでにブラジルを出国し、米国に生活の拠点を移していた。
その後、トランスジェンダー(生物学的性と性自認が一致していない人)による公衆トイレの使用について、彼女がSNSで嫌悪するコメントをしたことが原因で、21年にPTから除名された。
米国での起訴に対しては、パトリシア容疑者は米国政府による迫害の被害者だと主張し、「ベネズエラの石油に関する機密文書にアクセスしたことが原因でFBIの追跡を受けている」と述べている。
彼女は米国政府の陰謀の標的とされたとし、「私が引き起こしたとする犯罪は架空のものであり、私がおとりにされることを拒否したことに端を発する」とSNSに投稿し、無実を訴えた。