映画「ミーニャ・イルマ・エ・エウ(妹と私)」が、伯国映画としては5年ぶりに100万レアルの興行成績をあげたことが話題となっている。
日本では洋楽や洋画離れが進み、国内作品ばかりが人気だが、ブラジルではそれが真逆の印象だ。
ブラジルでは国内音楽も聞かれてはいるが、コンサート興行ということになると、昨年末に話題だったテイラー・スウィフトやポール・マッカートニーなど英語圏からやってくる大スターのものばかりとなる。ロラパルーザやロック・イン・リオなどのフェスティバルも同様だ。
映画も然りで、ヒットするのはハリウッドのものばかりで国内映画は蚊帳の外の印象がある。
コラム子は基本、洋楽、洋画育ちなので、それでも困らないといえば困らない。だが、ブラジル国内にも音楽や映画を志す人は多いわけで、自国のエンターテイメント産業の成功はやはり望みたいもの。そんな中でこの映画の成功は嬉しいものだ。
この「妹と私」、どういう映画かというと、生まれ故郷の街に住み続ける姉と、都会でネットのインフルエンサーとして派手に暮らす妹。対照的なタイプの姉妹が母の失踪を機に肉親愛を確認するというものだ。
題材としては、それほど大ヒットする要素があるとは思えない。ヒットの理由は、姉妹を演じた2人、イングリッド・ギマリャンエスとタタ・ヴェルネックがブラジルを代表する女性コメディアンであることだ。
あまり他の国には知られていないが、ブラジルでもお笑いは大人気。日本人であるコラム子が見ても可笑しく、国際的にもかなりレベルの高いお笑いをしていると思える。
そんなブラジルお笑い界でトップクラスの人気を誇っているのが、女性コメディアンというのは、女性の社会進出の観点からもなかなか痛快な話だ。
それに加えて、この映画、監督も女性なのだ。ここにはちょっとホロリとする話がある。同作を手掛けたスザーナ・ガルシア監督は、2021年に42歳という若さでコロナ・ウイルスにより人気絶頂のまま亡くなったゲイのコメディアン、パウロ・グスターヴォの一連のヒット作を手掛けた監督で、彼の活躍を支えてきた人物だ。
パウロは「ミーニャ・ヴィーダ・エン・マルテ」(2018年)をはじめ、主演するたびにブラジルの国内映画の興行記録を塗り替えていった。パウロの逝去は、ブラジル芸能界にとって大きな損失で、それが国産映画の興行不振にもつながっていた。この映画のヒットは、その後継者が見つかったという意味でも極めて大きな意味を持つ。
今作を皮切りにブラジル映画の好転を願いたい。(陽)