昨年12月上旬、ブラジルの大学共通試験「Enem」が、全国の学校を舞台に行われた。私の受験会場はサンパウロ市のサンジュダス大学。多様な人種がひしめく受験会場の様相は日本とは真逆。しかし、試験前のこの独特な緊張感は日本と変わらない――。
私は今年7月に22歳になる日系4世のブラジル人だ。デカセギとして日本に渡った両親は群馬県で知り合い、私を授かった。3歳のころ長野県へ移住した。公立飯田風越高校に入学し、卒業後は大学進学を希望していた。父はそのころ伯国で、マーケティング関連の仕事をしていた。進路選択に悩んでいた際に父から掛けられた「進学先にブラジルの大学も考えてみては」という言葉もあり、2021年、高校卒業後にブラジルに渡った。
国籍こそブラジルだが、実際には幼少期に数度、短期旅行で来たことがあるのみ。ポルトガル語も家庭内で使ってはいたが、とても大学受験で使えるようなレベルではなかった。
生活環境に慣れるのと、ポルトガル語を必要最低限のレベルにまで引き上げるのに1年間を要した。その間、ブラジル日報記者としてお世話になった。昨年3月に辞めて予備校に入学し、本格的に受験勉強へ集中し始めた。
進学希望先は、ブラジルを代表する有名校のひとつ、サンパウロ州立大学(USP)国際関係学部。取材で出会った多くの日系人も卒業した大学であり、ブラジル中の秀才学生たちがライバルとなる。
最初から一心不乱に試験勉強に臨みたいところだったが、日本育ちのこの身には、まずはブラジルの大学入試制度を良く知る必要があった。
さらには、ブラジルでの学歴を持たないため、他のブラジル人学生には必要ない様々な事務手続きが必要だった。例えば日本の学校の卒業証書を伯国でも通用させるための方法(Revalidacao de diploma)を自分で調べて手配しなければ、入学試験を受ける権利すら得ることが出来なかった。
今回は昔のよしみで、受験体験で知り得たブラジルでの大学受験に必要な基礎知識や、勉強面における反省点を連載として書くことになった。私の様に進路選択に悩む日本育ちの日系人学生の参考になれば幸いに思う。
――試験結果は今月30日に発表される。
(松永エリケさん、続く)