ブラジルの大学受験=長野育ちの日系4世の挑戦(2)=予備校事情と人種間経済格差

予備校ETAPAサンジョアキン校舎

 ブラジルでも受験産業は盛んだ。国立、州立大学は学費無料なため、受験競争も激しい。サンパウロ州には有名大学が多く、予備校(Cursinho)も多数存在する。有名どころとしては「OBJETIVO」「ETAPA」「ANGLO」などが挙げられる。
 私も大学受験に臨むにあたり、予備校に通うことにした。予備校に行けば、学力の向上はもちろん、受験に関する様々なノウハウが得られると考えたからだ。
 私は3校の中から、身近な人々の評判が最も良かった「ETAPA」を選んだ。同予備校ではまず、オンラインと対面の2形式から希望の授業スタイルを選ぶ。
 オンラインの方が授業料は割安で、最も安価なオンライン夜間授業コースは毎月1936レ(約5万7千円)だ。対面式だと毎月2978レ(約8万8千円)になる。
 授業コースには両スタイル共に夜間、昼、朝、医学部があり、順に値段も高くなる。
 私は予備校で教師や学友との交流も期待していたので、対面スタイルを希望し、予備校費用を自分の貯金から捻出していたので、安価な夜間コースを選んだ。
 入学前に学費減額・免除試験を受けたことで、実際の授業料は、本来の値段より安い毎月685レ(約2万円)で通うことができた。非常に助かった。
 予備校の授業料は入学
登録を早めに済ませたり、年間授業料を一括払いすることでも大幅に減額してもらえる。予備校選びの際はホームページを念入りにチェックすることをお勧めする。
 私の通った夜間コースでは、平日に1コマ45分の授業を計5時間受けられるのに加え、毎週土曜日の午後に行われるサンパウロ州立大学やENEMをモデルに作成された模試を受けることができた。
 授業料毎月6893レ(約20万円)の医学部コースでは、月~金曜日午前7時から午後4時、土曜日の午前中に授業を行う。中々のハードスケジュールだ。
 予備校通いを続けるうちに、授業料の高いコースには白人系生徒が多いことに気付いた。
 2022年にブラジル地理統計院(IBGE)が発表したデータによると、白人系の平均月収は3099レ(約9万円)。それに対し、黒人系は1764レ(約5万1千円)、褐色系は1814レ(5万3千円)だ。
 私の様に授業料を減免してもらっていたとしても、黒人系や褐色系にとって予備校費用は大きな経済的負担だ。別に予備校に人種差別があるわけではないが、一般社会の経済格差はそのまま反映されているようだ。
 ブラジルの厳しい格差という現実を受験勉強によって乗り越えようと挑む彼ら。ブラジル社会の中で日本育ちであることを引け目に感じ、受験を通じてそれを克服しようとしている自分。どこか通じるものを覚え、心の中で彼らにエールを送った。(松永エリケさん、続く)

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