ブラジルでは、大学の入学難易度を「偏差値」で表す習慣が無い。そのため、残念ながら日本で行われている「大学偏差値ランキング」のようなわかりやすい形で大学の入学難易度を語ることができない。
当地大学の入学難易度は、国立と州立大が難しく、その後に有名私大、一般私大が続く形だ。学部では医学部の難易度が高い。一般的に、最も入学難易度が高いと言われているのは、工科大学のITA(航空技術研究所)だ。私の通っていた予備校の関係者も「ITAは別格」と口を揃えて語っていた。日本でいえば東京大学理科三類の様な存在だろうか。
ITAの試験科目は数学、物理、化学、ポルトガル語、英語、小論文。例年の入学倍率は100倍超で、多浪して入る人も珍しくない。入学要件に24歳以下という制限があり、これがまた入学難易度を高めている。入学者の内、軍隊所属希望者は軍人として扱われ、毎月給料が支給される。
私の進学希望先のサンパウロ州立大学(USP)国際関係学部は、例年50倍超の入学倍率。1次試験で一般教養科目からなる90問に答え、2次試験でポルトガル語、歴史、地理の筆記問題と小論文を提出する。
参考までに、世界大学ランキングの一つQS World University Rankings 2024(https://www.topuniversities.com/world-university-rankings?page=0)によれば、1位は米国のマサチューセッツ工科大学、東京大学は28位、USPは85位となっている。
日本では予備校で模試を受けると、志望校の合格見込みをA~Eの5段階で判定してもらえるが、こちらでは模試を受けた生徒の中での順位を「上位○%」という形で伝えられる。
受験勉強を始めた頃に受けた模試では「上位60%」だった成績が、9月頃には「上位30%」となり、自分を褒めてやりたくなった。しかし、ENEM本番一カ月前に受けた模試で、小論文の評価が「下位10%」と出た時はかなり焦った。
私は日本で公教育を受けて育ってきたため、伯国で一般教育を受けた人たちよりも、どうしてもポ語の語彙や古典的な言い回し、大元となるラテン語の語彙などの教養の点で敵わない部分がある。
だから語彙や論理的な文章表現が必要な小論文では、その差が顕著に出てしまう。こればかりは1年や2年で何とかなるものではなく、時間をかけて身に着けていくしかない。
逸る気持ちを抑え、より一層勉強に集中する精神コントロール技術もまた、受験には必須の能力であることをこの時強く学んだ。(松永エリケさん、続く)