《記者コラム》盛況だった橘和音楽祭=全ての人の思いを集め

橘和ファミリー(©Silvio Sano)

 1月28日、聖市東部ヴィラ・カロン区で第8回橘和音楽祭が開かれた。例年は5月に静岡県人会で行っていたイベントが、コロナ禍のために止まり、やっと再開したものだ。
 最初の予定では、今回も橘和音楽教室の生徒を中心とし、主催者の橘和保江氏らの馴染みの深い日本人会を会場とするはずだったが、生徒以外の参加者も増えたことなどで、机を入れても3~400人は入る場所に会場を移した。
 参加者の一人が以前からコロニア一と折り紙をつける橘和バンドの演奏で歌うことになった歌手は100人。イベント開催を促した人達がコーディネートにも協力し、12月と1月の土、日にバンドとの練習を2度行った上での本番は、歌手やその家族、バンド演奏や歌手達の歌を聞こうと集まった人達で溢れた。
 バンドで歌う歌手やコーラスの歌声は朝9時から夜8時まで続き、最後の歌手が歌った後はバンドの演奏で踊りに興ずる一幕も。イベント終了後は、参加者達がバンドやイベントを讃え、次の開催を促すメッセージを送るなど、盛況、成功という言葉がふさわしい催しとなった。
 次のイベントの予定は決まっていないが、会場を埋めた人達やその熱気は、これからも橘和ファミリーを突き動かし、イベント継続を促すことだろう。
 だが、盛況だったイベントだけにより強く感じるのは、裏方に徹してくれた人達の存在や、これらの人達との間で揺るぎない信頼関係を作り上げてきた橘和一家のすばらしさだ。
 練習日の4日間と前日の準備(もちろん当日も)には、朝から晩まで付き添った夫婦がいたし、自分達の会館での練習日と当日は日本人会の婦人達がやはり1日中、裏方を務めてくれた。練習日の日程管理や歌手毎の日本語でのナレーションの準備なども行ったコーディネーター達、照明、装飾、受付その他で協力してくれた人達も数え出したらきりがない。
 100人分の楽譜を揃え、パート毎に割り振り、個々または一緒に練習し、歌手が歌い易い楽曲に仕立ててくれた橘和バンドは、音楽好きの夫婦から生まれ、育ってきただけに、音楽に対する妥協はなく、技術やハーモニーも抜群だ。音楽や人を愛し、参加者や互いの体調なども気遣いつつ、自分達が先頭に立って動く一家の姿が人々の信頼や愛情を得てきたことも一目瞭然だ。

会場を埋めた人々(©Silvio Sano)

 コーディネーターの一人がイベント後に送った、「一人では何もできない。全ての人の手が加わって実現した」という趣旨の言葉を添えた謝辞には、『一人の手』という曲の「一人の小さな手、何もできないけど、それでも、みんなの手と手を合わせれば、何かできる、何かできる」という歌詞も思い出した。
 所用で参加できず、遠くから見守りつつメッセージを送ってくれた人や次は声をかけてと頼む人など、本当に多くの人の思いや願いを集めて実現した音楽祭。素晴らしい一家、素晴らしい歌手や友人達との出会いや交わりを堪能し、次はいつ? との思いを膨らませた一時だった。(み)

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