「これは幸先の良いスタートが切れた!」。スペインのサッカー・リーグ「ラ・リーガ」の名門バルセロナFC(バルサ)に今年から加入した18歳のストライカー、ヴィットール・ロッケが1月31日、対オサスナ戦で、加入後初得点を決めたのだ。
これにはとてもホッとした。ブラジル人選手が欧州に移籍した際、どんなに才能あふれる選手でも指導者と相性が合わなければ、試合に出てもうまくいかず、持っていた才能を逆に退化させしまうことが少なくないためだ。
ヴィットール・ロッケは、名門バルサに18歳で入団し、下部組織でのプレーをすることなく、いきなり実戦に参加させてもらっている。しかし、起用はまだ後半の試合時間の残り時間少ないタイミングでのことが多い。
ロッケはここまで、ラ・リーガで3試合、トーナメントのコパ・デル・レイで起用されたが結果を出せていなかった。以前の当コラムにも書いたが、コラム子は彼がアトレチコ・パラナエンセにいる頃からそのプレーのファンであり、移籍後の活躍を案じていた。
だが、そうした不安もこの日のオサスナ戦で吹き飛んだ。後半18分についに初得点。しかも、この決め方が最高だった。味方ディフェンダーのジョアン・カンセロからゴール前に上がったクロスをヘディング・シュートで決めたのだが、この決め方が実にロッケらしかった。このクロスは、ゴール前の他の選手に向けてあげられたものだったが、そこに突然割り込む形でロッケがゴールを決めた。
これは彼がパラナエンセにいた時から最も得意としているプレーだ。ゴールの前でふと消え、突然現れる。このシュートも、キーパーが捕球態勢にこれから入ろうとするタイミングで意表をついて行われ、キーパーは反応できずにゴールを決められた。相手ディフェンダーやキーパーの心理を読んで、巧みにかわし、一瞬の隙を縫ってゴールを決める。ロッケはまだ18歳の少年とは思えないほど、類まれな心理的駆け引きができる選手なのだ。
そんなロッケは「チグリーニョ(小虎)」の異名をとり、早くも愛されている。バルサにも在籍したかつてのブラジル人名ストライカー、ロマーリオを思わせる小柄な体格ながら、俊敏に走り、狙った獲物は逃さないとばかりにがむしゃらにゴールを狙う集中力と執着心がある。才能がありながらも得点への意識が今一つ淡白な現在のブラジル代表に最も必要なタイプの選手でもある。
この活躍を伝説の第一歩としていきたいところだ。(陽)