ロシア産ディーゼル油=ブラジルが最大の輸入国に=1年間で輸入量6千%増

2023年、ブラジルはロシアから610万トンのディーゼル燃料を輸入(Foto: Roberto Parizotti / Fotos Publicas)
2023年、ブラジルはロシアから610万トンのディーゼル燃料を輸入(Foto: Roberto Parizotti / Fotos Publicas)

 ウクライナ侵攻後、EU(欧州連合)がロシアとのエネルギー関係を断絶することを決定し、ロシア産の石油やディーゼル燃料を禁輸としたことで、ブラジルは石油や天然ガス等の主成分である炭化水素全般で、中国とトルコに次ぐロシアからの第3位の輸入国となり、ディーゼルに関しては最大輸入国となった。ドイツ国営放送ドイチェ・ヴェレ記事を13日付UOL(1)が報じている。
 2022年、ブラジルはロシアから10万1千トンのディーゼル油を輸入し、総額9500万ドルを費やした。しかし、EUの制裁後の23年にはこの輸入量が急増し、前年比で6千%増の610万トン、45億ドルの取引額に達した。
 ブラジルが輸入したディーゼル油の内、9割以上がロシア産であった時期もある。この間の石油の輸入量は、前年比で400%増加した。
 この急増の背景には、EUの制裁により、欧州市場からロシア産の石油製品が追い出され、他の市場への売り込みが盛んになったことがある。ロシアは新たな買い手を見つける必要があり、割引も提供。ブラジルはそのような動きに乗り、ロシアにとって重要な市場となった。この動きはロシアが提供する割引を利用しようとする小規模な輸入業者から始まった。だが、市場競争力を維持するために大企業もこの戦略を採用するようになり、主に米国とインドからの輸入量が減るのを補うように置き換えが進んだ。
 ロシアは1日約95万バレルのディーゼル油を輸出しており、禁輸措置前はその約7割をEUと英国に送っていた。
 ブラジル燃料輸入業者協会のセルジオ・アラウージョ会長は、サプライチェーン全体での競争が価格の低下につながり、その結果として、消費者にディーゼル価格の低下が直接反映されたと説明した。
 また、ブラジルの経済成長、特に輸送用のディーゼル油需要が多い農業市場の拡大に伴い、製油所での増産を行うものの、需要に追いついていない状況だ。「国のエネルギー供給と安全保障を保証するためには、輸入を優先するべきだ。国内のディーゼル燃料の生産量は、需要の約70%しか満たしていない」とアラウージョ氏は言う。
 ブラジルの石油製品輸入業界の見解によれば、ロシア産ディーゼル油の輸入に関する状況の変化は、政府の意図的な政策ではなく、市場のダイナミズムによって促進されているという。米国やEUによるロシア産石油製品への圧力はあまり見られず、それは米国が選挙の年であり、世界的にもインフレや燃料価格に対する懸念が高まっているため、「ブラジルに対する、ロシアからのディーゼル油の輸入を停止するようにとの西側からの圧力が大幅に高まる可能性は低い」と一部専門家は見ている。
 ロシア政府は23年9月に石油製品の輸出を一時的に禁止し、ブラジル輸入業者は緊急に代替品を探さなければならなかった。しかし、同措置はロシア国内の供給を確保するための一時的なものであり、輸入業者は事業中断のリスクはないとみている。
 一方、ロシアの輸出の一時停止や減少はグローバルな規模での価格上昇を引き起こし、ブラジル国内の製油所にとっても基準価格への影響を与える可能性がある。さらに、ブラジルの輸入業者は競争力の低い市場で代替品を探す必要があり、その結果、利益率が低下し、ディーゼル油の価格が上昇する可能性がある。
 アラウージョ氏によれば、この傾向は24年も続く見込みであり、予想されるGDPの上昇、活動量とディーゼル油の消費量の強い相関関係、現在の国産品供給の維持を考慮すると、輸入量は23年より若干増えるはずだという。「ディーゼル油中のバイオディーゼル油含有量の増加は、輸入の必要性に影響を与えないだろう。ロシアは引き続き割安で提供し、輸入業者にとって最良の選択肢となることが期待されている」と述べた。

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