ブラジルのカーニバルはサンバだけではない。ミナス・ジェライス州中央部に位置するボンフィン市で11〜13日、184年も続く伝統的な祭り「カルナバル・ア・カバロ(馬上のカーニバル)」が開催された。その知られざるルーツを11日付G1サイトなど(1)(2)が報じている。
初日の11日、市の広場で約3千人の観衆が見守る中、様々な年齢の38人の騎手が到着し、世代間の交流がなされた。騎手の一人、10歳のペドロ・フランシスコ・リベイロ君は、「僕は家族の伝統を守っている。父や曾祖父も走っていたし、叔父も参加している。父から子へと受け継がれていくのを見ると、ちょっと感動するんだ」と語った。
同イベントのチアゴ・ラファエル・アギアル会長も20年以上会長職を務めた父親からのバトンを受け継いだ。「騎手はこの土地にルーツを持っていなければならない。長い間ここに住んでいるか、すでに参加している人の親戚でなければ」と説明した。
この伝統は1840年にポルトガル人のシキーニョ神父が祖国の「カヴァリャーダ」(騎馬行進)を再現したことから始まった。元々はキリスト教徒の十字軍とムーア人を代表する二つの騎手グループがそれぞれ青と赤の衣装を身にまとい、公共の広場でイベリア半島のレコンキスタ(再征服)を目指した聖戦を模した騎馬行進だ。
しかしある年、神父とカヴァリャーダ主催者との意見の相違から、カトリック教会から禁止に。その後、この祭りはカトリックの伝統から切り離され、カーニバルの時期に祝われるようになった。
豪華なビロードや手刺繍が施された衣装などオリジナルに近い衣装は残っているものの、パレードはもはや戦いを忠実に再現したものではない。現在この祭りは宗教性、信仰心、文化の融合の象徴として、色鮮やかな紙テープの交換を通じて騎手が観客と交流することを目的としている。1980年以降、女性と子供の参加も許可された。
騎手は3日間、美しい衣装と仮面を纏った騎士に扮し、飾り付けられた馬に乗り、市内のマトリス広場に設けられた周回路で、伝統的な「アバネイラ・ボンフィネンセ」の曲に合わせて様々な演技を披露する。
祭り最終日の終盤に騎手は馬から降り、仮面を取って紙テープを投げ合う。キリスト教徒とムーア人の戦いになぞらえて、戦争終結とレコンキスタ完成の祝福を意味し、3日間の「戦い」の後の騎士と市民の喜びと交流を表現している。
戦いが終わると、騎手らは再び馬に乗って2人1組でパレードを行う。各騎手は白いハンカチを持って相手のスカーフと結ぶ。最後に白いハンカチを手に、仮面を外したまま馬に乗って広場に戻り、来年もカーニバルに戻ることを観客に約束して別れを告げる。
同市の観光担当局のファビオ・カンポス氏によると、「この祭りはボンフィンの文化とアイデンティティにとって重要だ。全国から観光客を引き付け、ブラジルの騎馬の伝統維持に貢献している」と説明した。