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地域日本語教育の発展に寄与=聖南西教師研修会で知見共有

研修中切羽琢磨にし合った参加者たち

 聖南西教育研究会(渡辺久洋会長)による聖南西教師研修会が1月24~25日、サンパウロ州サンミゲル・アルカンジョ市のコロニア・ピニャール青年図書館宿舎で行われた。聖南西地区の日本語学校から17人の教師と、国際交流基金日本語上級専門家の斎藤誠さん、ブラジル日本語センターのJICA派遣隊員でマーケティング専門家の芦田園美さんが参加した。

 開会式では徳久俊行コロニア・ピニャール文化体育協会会長や聖南西文化体育連合会原口イレーネ教育部長らが挨拶に立ち、参加者らへ激励の言葉を送った。
 研修初日は、斎藤氏による「読むことの教え方をもう1度考えよう」の講義から始められた。日本語の読み方は「トップダウン型」と「ボトムアップ型」に分類でき、この類型を踏まえた上で授業を行うと生徒の読解力が向上するとの説明が行われた。
 福沢一興氏(レジストロ日本語学校)は「とても学びのある講義でした。読むことについて改めて意識していかないといけないと考えさせられた」と話した。
 続いて参加教師らによる普段の授業で使えるアイディア紹介が行われた。参加者らは教師たちがいかに日ごろから工夫して授業を行っているのかについて理解を深めた。

アリーネ先生による移民すごろくのプレゼンテーション

 独創性溢れる授業アイディアとして好評を博していたのが、アリーネ・ヴァンデルレ先生による「移民すごろく」だった。すごろくは手作りで、止まったマスのブラジル移民史クイズや日本移民クイズなどに回答してゴールを目指す。ゲームを楽しみながら知識を学ぶことができ、子どもにも人気だという。
 参加教師の相園明嘉さん(ピエダーデ日本語学校)は「普段の授業でいいアイディアが思いつかず不安になることがあります。皆さんに教えてもらったアイディアの中には、自分の学校でもできるものが多くあり、ポジティブな気持ちになりました」と笑顔で話した。
 グループディスカッション「今の児童に対する指導・接し方」、「生徒(子ども・成人)を増やすために・続けてもらうために」も行われ、それぞれの学校の問題を共有し、解決方法がないか意見を出し合った。
 1日目最後の講義は、芦田氏による広報活動についての講演となった。
 2日目はJICA隊員で、ピエダーデ日本語学校の日本語教師として活動している金城愛樹さんによる「発達障害に対する教育」についての講義が最初に行われた。
 昨今、発達障害といわれる、コミュニケーションがとりにくい子どもが増加しており、教師たちの関心が強い講義内容となった。

研修の様子

 講義では、発達障害児童に対して、多くのお金や時間をかける教育方法ではなく、ひと工夫した「ことば」をかける教育方法が紹介された。やみくもに言葉をかけるのではなく、一人一人に向き合って、その子の得意不得意を知った上で言葉をかけるとコミュニケーションがとりやすくなるという。そして、一緒に対処法を考えることが子どもの未来のためにもなると語った。
 続いて渡辺会長による「低学年・児童の授業の工夫・活動」と「絵画授業の工夫と活動紹介」が行われた。授業を受ける子どもたちの意識を改革することが重要になることから、授業中に繰り返し五感を使うことや成果を子どもの見えるもので提示してモチベーションを上げる必要性が述べられた。
 研修最後の講義は斎藤氏による初日の講義の続きが行われた。
 今回の研修会について、長谷川美雪さん(UCENS日本文化センター)は「日本語教育については毎年課題を抱えています。研修会で参加者の皆さんと情報共有したり、人生の教訓を聞くと課題解決にすごくプラスになります」と話した。

研修の様子

 川崎奈央子さん(ピラール・ド・スール日本語学校)は「今回の研修会では長年の経験に基づく教えと、新たな視点からの教えを頂くことが出来たので、少しずつかみ砕いて自分のものにしていきたいと思います」と感想を述べた。
 閉会式では、コロニアピニャールモデル校市川幸三運営委員長が登壇し、「今回は他地域からの先生が少なく寂しさを感じました。次回の参加を楽しみにしています。研修会は来年も実施するので、参加者の皆さんはまた1年間頑張ってください」と締めくくった。
 研修会に参加した教師の所属校は次の通り。コロニア・ピニャール日本語モデル校、ピラール・ド・スール日本語学校、UCENS日本文化センター、ピエダーデ日本語学校、カッポン・ボニート日本語学校、四つ葉学園、レジストロ日本語学校。

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