国立自然災害監視警報センター(Cemaden)が20日夜、サンパウロ州北海岸で数時間以内に地滑りや洪水、その他の水害が発生する危険性が高いとの速報を流した。
この報道で思い出したのは、1年前、同地域のサンセバスチアン市で起きた土砂崩れで64人が死亡した事件だ。土砂崩れによる犠牲者はヴィラ・サイ地区に集中。山肌に張り付くように建てられた家屋は倒壊し、その中を捜索隊や家族が救助作業にあたっていた様子が思い起こされた。
サンセバスチアンでは20日も、17時15分までの1時間で57ミリの雨が降り、洪水や土砂崩れの危険性の高い地区では避難を呼びかけるサイレンや警報が流れた。また、場所により3時間で100ミリ超という雨は北海岸諸市の道路を川に変えた。
幸い、21日朝のニュースなどでは土砂崩れによる死者発生という報道は聞かなかった。これは、ブラジル南部沖で発生し、最大時速116キロ超の風を引き起こす可能性のあるサイクロン「アカラ」が勢力を失い、最大時速60キロ程度の熱帯低気圧になった影響だけでなく、過去の災害に学んだ結果だと信じたい。
サンセバスチアン市民や当局はまだ、1年前の災害を忘れていない。州防災局は1時間の雨が45ミリを超えた時点で市防災局に通達を出して、サイレンを鳴らし、避難を呼びかける警報を流すよう促した。市も防災プランを発動させ、雨が小降りになった18時15分に警戒態勢を解き、帰宅も認めたという。
集中豪雨による洪水や土砂崩れで犠牲者が出る事態は各地で繰り返されているが、900人以上の死者が出た2011年1月のリオ州山間部での大水害後は災害監視や警報に関する体制作りが進み、サイレンや警報を取り入れる自治体が増えた。また、整備が行き届かず、サイレンが鳴らなかったという事態はまだ起きているものの、徐々に改善している。
病気や災害は予防対策にお金をかける方が事後処理にかかる費用より安いし、被害や損失も回避できるか、程度が軽く済む。あとは市民や当局が、頭では理解していても事が起きるまで放置しておくか、転ばぬ先の杖という、より懸命な選択をするかにかかっている。気候変動もまた然りだ。
サンパウロ州では20日もヴァレ・ド・パライバ地方で濁流に流された女性が亡くなったが、サンセバスチアンでは雨による犠牲者発生を回避できた。死者だけで64人という昨年の悪夢を繰り返したいと思う人はいないと信じたいし、大半の災害は少なくとも一部は人災であり、人の手で食い止められる部分は然るべき対策をとり、繰り返してはならないとも思う。
温暖化やそれに伴うエルニーニョ現象などで風水害や干ばつも増える中、今、何ができるかを考えたい。(み)