ルーラ大統領が17日、「イスラエルのガザ地区での行動はジェノサイド(大量殺戮)」と発言し、国内外で波紋を呼んだ。そしてその4日後の21日、米国のアントニー・ブリンケン国務長官と会談を行った。
識者らは今回の会談で「対米国との関係が悪化し、国際社会でブラジルが孤立することも有り得る」と恐れていたが、結果は、ブリンケン氏がルーラ氏に対して「我々の見解は異なる」としながらも謝罪の要求などはすることもなく、2時間もの話し合いを「有意義な話し合いができた」「これまで以上の協力関係を」と話すにとどまった。
コラム子はこの辺りに現在の米国政府のちぐはぐさを見た。ルーラ氏から前述の発言が飛び出しても強く言い返せない。それはまるで、「そうした発言が出るのも無理はない」と自分たちでイスラエルが批判される状況を認めてしまっているようでもあった。
米国はこれまでイスラエル支持の大義名分を「パレスチナの武装集団ハマスがとった135人に及ぶ人質のため」として行ってきた。だが、聞こえてくるのは人質解放の一報ではなく、ガザの町並みを手当たり次第に荒廃させ、ハマスとどういう関係があるのか今ひとつわかりにくい病院への襲撃などだ。これまで1万人を超える、本来戦争に巻き込むべきではない子供たちが亡くなっている統計が出ている。2月18日付の統計ではパレスチナ人の2万8473人の死亡に対し、イスラエル人は1410人の死亡と、パレスチナ人が20倍の死者を出している。
「イスラエルがハマスからテロにあった」「ハマスに人質が捕らえられている」という大前提を繰り返して主張しなければ、イスラエルが一方的にパレスチナ人を攻撃しているようにしか見えない状況になっている。
国連の安全保障理事会でもこれまで度々、停戦を求める審議が行われているが、米国が3度拒否権を行使することで実現していない。21日に至っては15カ国中13国が停戦に賛成、イギリスが棄権の状況で米国1国だけしか反対していない。
先週には米国バイデン大統領がパレスチナ人の多くが避難したラファ地区への攻撃を強く反対。イスラエルのネタニヤフ首相に40分頼み込んで停戦を求めたが同首相は強硬に反対。これが、安保理の最新の停戦案が承認されない原因となっている。
ルーラ氏の発言に対しての批判は、対米関係の悪化を恐れてのものが多かったように思うが、米国側の態度がこれでは、それはやや杞憂だったかもしれない。(陽)