今年3月1日は、ブラジルがハイパーインフレから脱却し、レアル通貨を導入するための重要なステップとなった実質価値単位(Unidade Real de Valor、URV)の発効30周年を迎える。URVは、給与や契約などの一部の取引において、インフレに影響されない安定した価値を提供する準通貨で、通貨価値を安定させるための前段階として導入され、価値が毎日調整される仮想的な単位だった。この一連のレアル通貨導入計画はブラジルの経済を安定させるための重要なステップであり、その後の経済改革の基盤となったと27日付ヴァロール紙(1)が報じている。
1980年代後半から90年代初頭にかけてのハイパーインフレ時代は、労働者たちが給料日前夜に行われる商店値札の書き換えを避けるために、給与支払い日の前倒しを求めたというほど、賃金と物価の競争が激しく、労働者が常に不利な状況で、年間3千%というひどいインフレ率を経験した。今のアルゼンチンをはるかに凌駕するひどい状態だった。
1994年のレアル計画でハイパーインフレから脱却できたのは、物価を安定させるために5年間で6回にわたる試みが失敗に終わった後だった
レアル導入の土壌を整えた準通貨であるURVは、月40%を超える高インフレからショックや物価凍結なしにより低率のインフレへの移行を可能にした革新的な通貨だった。94年7月にURVがレアルに切り替わると、インフレ率は6・84%に低下。翌月は1・86%まで下がった。
レアル計画は物価を安定させただけでなく、今日のブラジル経済を支える一連の改革の出発点でもあった。民主社会党(PSDB)所属の上院議員で、計画策定時には財相だったフェルナンド・エンリケ・カルドーゾ氏は、不可能と思われていた同計画を実現したことで「奇跡」の人と呼ばれ、同年の大統領選で当選を果たし、翌95年に第34代大統領に昇格した。
同計画は、コーロル大統領(当時)の罷免審議が始まった92年10月に発足し、92年12月に正式に大統領に就任したイタマール・フランコ氏の政権下で育まれた。カルドーゾ氏は当時、外相だったが、93年5月にイタマール氏から財相に任命された。カルドーゾ氏はイタマール政権発足8カ月で4人目の財相となった。
その結果、経済学者のペドロ・マラン氏を中銀のトップに、ペルシオ・アリダ氏を社会経済開発銀行(BNDES)の総裁に据えることができた。
レアル計画は、古い通貨と毎日価値が修正される新しい通貨の二つの通貨システムを作成することで、価格上昇のダイナミクスを打破するという、1984年発表された論文に影響されたもので、肝心な修正通貨にはURVが使われ、後にレアルとなった。
これにより、日常の取引などでは旧通貨が使われたが、給与、年金、公共部門の契約などはURVに変換され、インフレから保護された価値を維持できるようになった。
レアル導入成功は、カルドーゾ氏の大統領当選という結果を生んだ。同氏が大統領任期の2期8年間を通してその定着を進めた結果、安定するに至り、公社民営化や規制機関設立、変動相場制や経済基本金利(Selic)などの今日まで続くマクロ経済の基本政策導入、経済近代化の一連の措置もこの間に取り入れられた。