少女の夢叶えるための飛行中に=パラグライダー操縦士が突然死

 「少女の夢を叶えてあげたい」―ミナス・ジェライス州中央部のセッテ・ラゴス市で11日、パラグライダーで飛行中に操縦士が心臓発作で死亡したが直前の的確な行動により、同乗していた少女は奇跡的に無事だったと25日放送のグローボ局番組ファンタスチコ等が報道した。この操縦士は、空を飛びたいという少女の夢を叶えようと飛行体験の提供を自ら申し出ていた。25日付G1サイト(1)が報じている。
 13歳のダフィニー・ド・カルモちゃんと母親カリーニさんは、同市の路上でボンボンやチョコレートコーンを売って生活費を稼いでいた。その日は売り上げを伸ばすために市内で最も高いサンタエレナの丘に向かい、同地域で20年以上の飛行経験を持つパラグライダーの操縦士ジルベルト・アラウージョさんに出会った。
 ダフィニーちゃんは、「おじちゃんは私の手からお菓子を買っくれて、『おいしい』と言いながら目の前で食べてくれた。私はとても嬉しくて『私の夢は空を飛ぶこと。いつか夢が叶うと信じています』と言ったの」と思い出す。
 同じ日の午後、母娘は丘に戻り、フライトから戻ったばかりのジルベルトさんと再会した。彼は、「あの子を飛ばせてあげませんか? 彼女の夢を叶えてあげたいんだ」と、娘がパラグライダーに乗れるようにカリーニさんに許可を求めた。
 まさかの申し出に、ダフィニーちゃんは勇気を出して空に挑んだ。その恐怖と誇りが一混じった一瞬一瞬の様子を、母親カリー二さんは携帯で記録した。しかし、地上からは空中で何が起こっているのか、誰も想像できなかった。
 ダフィニーちゃんは「私たちは小さな教会の上を一周して戻ってきた時、おじちゃんは最後にこう言ったんです。『素敵な体験だ。恐れる必要はないよ』。そして無言になった…」と回想した。
 強制着陸するまでのある時点でジルベルトさんは死亡したとみられる。移動式緊急医療サービス(SAMU)によれば、死因は心臓発作である可能性が高いという。
 パラグライダー操縦士ダヴィソン・オリベイラ氏が、カリーニさんが記録していた飛行映像を確認したところ、ジルベルトさんは体調不良であったにもかかわらず最後に飛行コースを調整しており、それが少女を救ったのではないかと考えている。
 「彼が最後にパラグライダーを着陸地点のひとつに近い安全な場所に向けたことで助かったんだと思う」と説明した。パラグライダーは20メートルの高さまで急降下し、木の枝に落下、ダフィニーちゃんはかすり傷を負っただけだった。
 ダフィニーちゃんは「おじちゃんが最後に時間を共にしたのは私。私の夢を叶えたことを、誇りに感じてくれていると思うわ」と感慨深く話した。

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