〝ブラジル版ホロコースト〟描く=精神病院実録映画が話題に

 ブラジル内にも大量虐殺の残酷な歴史があったことはあまり知られていない。『Holocausto Brasileiro(ブラジルのホロコースト)』と題された、国内最大の精神病院内の過酷な生活を描いたドキュメンタリー映画が、25日にネットフリックスで初公開され話題を呼んでいる。原作者でジャーナリストのダニエラ・アルベックス氏へのインタビューが26日付エスタード紙(1)で報じられている。
 この作品は、ミナス・ジェライス州南部バルバセナ市の「コロニア精神病センター」で、患者が受けた非人道的な状況を描く。同性愛者、売春婦、シングルマザー、虐待被害者など社会から疎外され、汚名を着せられている人々の物語を明らかにした。
 これらの患者は当時、ネズミを食べさせられたり、汚水を飲まされたり、寒さの中で放置された他、電気ショック療法などの拷問や残忍な扱いを受けた。この作品は、60~80年代に同院で6万人以上の死者を出した実情を浮き彫りにした。
 本作は原作者のダニエラ・アルベックス氏とアルマンド・メンツ氏が監督を務め、2016年に公開された。生存者、元職員、研究者、家族が非人道的な状況を暴き、50年以上にわたって隠されてきた真実を明らかにするもの。本編は90分、16歳未満は鑑賞不可だ。
 エスタード紙のインタビューでアルベックス氏は、残虐行為に満ちた出来事を発掘することの難しさを語り、同作品が扱ったテーマがメンタルヘルスと人権に関する現在の議論に深く関連していると説明した。
 彼女はリサーチ中に『オ・クルゼイロ』誌の元カメラマン、ルイス・アルフレード氏が1960年に撮影した写真に接したことで、この映画のアイデアが芽生えたという。写真にはコロニア精神病院の患者や施設の様子が収められていたが、病院ではなく、むしろ強制収容所を連想させるものであり、強い衝撃を受けたという。
 これをきっかけに彼女は50年前に撮影された人々を追跡調査することを決意した。その過程は簡単ではなかったが、粘り強く調査を続け、最終的に160人以上の生存者を見つけ出した。
 「最大の難関は、生存者を見つけることよりも職員や元職員との対話だった。彼らは、過去の現実を明るみに出すことに恐れを感じていた。私は彼らを裁くのではなく、彼らの話を聞くために彼らを尋ねた。彼らはそれを理解し、国家と社会が共謀してそこで起こした残虐行為を明らかにしてくれた。そこにある保健衛生は治療を目的とするのではなく、社会的に好ましくない人々を排除するために機能していた」と説明した。
 現在に照らし合わせると、人種差別の問題や精神衛生政策では復古的なイデオロギーに基づく政策の台頭が顕著で、特に強制入院の復活が懸念されていると同氏は論ずる。LGBTQIA+やその他の社会的マイノリティにも影響を与えている。
 アルベックス氏は「古代から、精神異常者や社会的に不適格とされる人々が隔離され、暴力や社会的排除にさらされてきた。彼らは文明の拒絶とみなされ、社会から隠れて生きざるを得ない境遇に追いやられた。しかし、個人の自由や尊厳を尊重したケアは譲れない権利だ。この作品はこの原則を思い起こさせ、再確認させてくれる」と締めくくった。

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