カカオ生産がアマゾン地域で成長の一途を辿っており、特にパラー州では2022年の生産額が19億レアル(約570億円)に達し、国内総収入35億レアルの半分以上を占めた。トメアスーの日本人移住地で始まった「森林農法」(多種類の商品作物や林業を組み合わせて環境保全と調和した農法)によるバイオ経済が州全体に拡大し、農家の生計向上や森林保護が進んでおり、来年のCOP30同地開催に向けて持続可能性と地域経済への貢献に注目が集まっている。29日付ヴァロール紙等(1)が報じている。
世界資源研究所(WRI)の調査によると、カカオはアサイーやブラジルナッツと並ぶアマゾン地域のバイオ経済の中心的存在であり、同地域全体の国内総生産(GDP)の120億レアル(パラー州では90億レアル)を占めており、2050年までにその3倍に達する可能性がある。WRIのシニアエコノミストのラファエル・バルビエリ氏は、「公共と民間のリソースを組み合わせ、初期段階でイノベーションと投資を誘致して経済的見返りをより大きくするための政策が必要だ」と語る。
この地域では、カカオは他の在来種や栽培作物と組み合わせた森林農法の拡大を通じて、家族農業によって生産されている。カカオ生産は牧畜よりも収益性が高く、食料の安全保障を確保しながら牧草地の代わりに森林を回復することができるため、森林伐採に対する戦略として推進されている。
現在、世界的にカカオ需要が急増し、商品価格が高騰している中、ブラジルの供給能力は国内消費すら賄うことができず、生産拡大への投資機会が拡大している。バルビエリ氏によると、アマゾン地域では約2千の小規模な手作りチョコレート工房が存在するが、同地域生産のカカオのわずか3%未満しか使用しておらず、残りの大部分は大量生産の市場向けに出荷されている。
この10年間で650家族が森林農法での生産支援を受けたことで、市場へのアクセスが提供され、地域の農村コミュニティの経済的自立を促した。
ブラジル農牧調査研究公社(EMBRAPA)の調査によると、パラー州では75%が荒廃した地域、かつては森林伐採や焼畑農業によって劣化した土地を再生するための取り組みとしてカカオ生産が行われている。土壌の保全や生態系の回復が促進され、森林伐採や火災のリスクが低減されるという好ましい効果が得られている。
専門家は、この取り組みには単一の作物栽培を避け、地元市場の多様化を図ることが重要だと話す。農業の持続可能性が向上し、地域経済の安定化が図られるという。多様な作物の栽培は、地域の食料安全保障を向上させるだけでなく、農家の収入源を安定化させ、農地の健全性を維持する助けにもなるのだという。
州政府や地域企業からの投資にさらなる期待が寄せられており、現時点で多国籍銀行や開発銀行経由で約3億5千万レアルが投資される見通しだという。22年に発表された同州のバイオ経済計画では、カカオとアサイー製品のみで年間1200億米ドルの輸出の可能性があると予測している。
同州の自然植生回復計画は30年までに560万ヘクタールを再生する目標を掲げており、この取り組みは森林農法にも大きな利益をもたらす可能性がある。