今やサンパウロ市の「3月の風物詩」となっているロラパルーザ・ブラジル。2012年から始まり、パンデミックの2020、21年に開催中止になった以外は毎年開催。近年は3日間で20万人の動員を記録している通称「ロラ」は、今や南米を代表する音楽フェスティバルでもある。
ただ、そのロラが昨年から、大げさな言い方をあえてすると、「呪われている」状態となっている。出演者のキャンセルが相次いでいるのだ。
昨年はトリに出演予定だったブリンク182とドレイクがキャンセルになったが、今年はすでに4組がキャンセル。その理由のいずれもが「個人的な理由」とされ、コロナウイルスへの感染などではないことを考えても、不可解なものを感じる。
しかも、今年のキャンセルのうち3件は、2月27日に主催者側から突然発表されたものだ。まとめてキャンセルがあったものの事後報告だったのか、同時に2アーティストが急きょ追加で出演することも発表された。だが、ロラに出演する国外アーティストはそれなりに人気が高い粒ぞろいなだけに、キャンセルに対してファンの落胆も大きなものだ。
加えて2月28日、主催者側がメディアのインタビューに答え「キャンセルに関しての規定は出演者との契約に含んでいない」と発言したのが報じられ、ロラ・ファンの間で強い不満の声がネットで高まっていた。
「運営者の問題ではないか」と思われるかもしれないが、必ずしもそうではない。なぜなら、昨年の運営者と今年のそれは異なるからだ。ロラは昨年まで国内最大手の興行企業「T4F」だったが、今年からは米国に本社を持つ世界的大手「ライブ・ネーション」のブラジル支社。つまり、主催企業が変わってもキャンセル続きなのだ。
引き継いだライブ・ネーション側にしてみれば。半分はとばっちりの要素も強い。だが、これからはロラといえば同社のイメージがどうしても強くなる。うまく手綱を引き締めないと、ここまでせっかく大きくなったロラそのものが弱体化する危険性をも孕んでいる。
一方のT4Fはロラから手を引いた後、12月上旬開催の音楽フェスティバル「プリマヴェーラ・サウンド」の運営を10年契約で結んでいる。2022年から始まった同イベントは、早くもロラの最大の対抗馬と目されているだけに、今後は双方ともにキャンセルなどのイメージダウンを避けたいところだろう。(陽)