昨年解散を発表した、ブラジルを代表する世界的ヘヴィメタル・バンド「セパルトゥラ」(Sepultura)が3月1日、さよならツアー「セレブレーション・ライフ・スルー・デス(死を通じて生を祝う)」をスタートさせた。ベロ・オリゾンテを皮切りに、欧州とラ米40カ国以上を18カ月にわたって巡る予定だ。
1998年にアルバム『アゲインスト』を発表した際、収録曲「カマイタチ」では日本の和太鼓集団鼓童と共演した。2001年と2018年に訪日公演もしている。
バンド名はポルトガル語で「墓」を意味する。彼らの40年にわたる活動では、メンバー交代や音楽スタイル変更などの変遷をたどりつつも国際的成功を収めた。日本でもライブ経験があるこの伝説のバンドを2月26日付フォーリャ紙(1)が紹介している。
1984年にミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンテで、マックス(ボーカル兼ギター)とイゴール(ドラム)のカヴァレラ兄弟によって結成され、セカンド・アルバム「スキッゾフリーニア」(87年)がヨーロッパで注目を集めた。これより、米国のレコード会社であるロードランナー・レコードと契約してリリースした「ビニース・ザ・リメインズ」(89年)が国際的バンドに押し上げた。
メンバーはカヴァレラ兄弟に加え、ベースのパウロ・ジュニオールとギターのアンドレアス・キッサーを含む4人編成だった。93年までは、従来のヘヴィメタルにハードコアの過激さを加えた音楽形態スラッシュメタルでのツアーを行い、スピード感あふれる荒々しいスタイルが人気を博した。
しかし、93年の「カオスAD」でバンドは大きな転換点を迎える。同アルバムでは、スラッシュメタルの速さをグルーヴメタルというスタイルに変え、ギターのリフ(楽曲の中で繰り返される印象的な短いフレーズ)をよりゆっくりとしたテンポで演奏し、バンドはさらに注目を集めた。
その3年後にリリースした独創的なアルバムの一つ「ルーツ」(96年)では、先住民族の打楽器を使用してメタルと民族音楽を融合させ、世界中のファンを引き付ける斬新なサウンドが生まれた。米国ロックバンド「フー・ファイターズ」のリーダー、デイヴ・グロールはこれをメタル・アルバム史上最高の5枚のうちに入ると評価している。
その年の12月、セパルトゥラ6枚のアルバムを制作した後、マックスはバンドを去った。バンドのマネージャーであった妻のグロリアを、他のメンバーが解雇しようとしたことがきっかけだった。彼は別のバンドを結成。イゴールはさらに10年間バンドに在籍し、その後は他のプロジェクトに参加した。デリック・グリーンという米国人がバンドのボーカルを担当し、バンドはその後も9枚のアルバムを制作。カヴァレラ兄弟が不在となった後も、セパルトゥラはメタルシーンでの評判を保ち続けた。
今回のツアー中に演奏される40曲を収録した最終盤をリリースする予定だ。「バンドの歴史上、今が最高の瞬間、とても平和的にシーンを去ることになる。これは、終わりと新たな始まりのサイクルだ。我々は解散を祝いたい。喧嘩別れするのは嫌だし、ステージ上で年老いてしまうのも嫌だった」とギタリストのアンドレアス・キッサーは説明した。