【既報関連】自動車業界におけるブラジルへの投資熱が高まっている。フィアット、クライスラー、プジョー、シトロエンなど14の自動車メーカーを束ねるステランティス・グループが6日、30年までにブラジルに300億レアル(約9千億円)を投資すると発表した。これによりブラジル自動車部門への投資総額が973億レアル(約2兆9千億円)を超え、史上最大の投資サイクルになったと6日付エスタード紙など(1)(2)が報じている。
これは、同グループ最高経営責任者カルロス・タバレス氏、ルーラ大統領(PT・労働者党)、ジェラルド・アルキミン副大統領兼商工開発相(ブラジル社会党・PSB)が出席した大統領府での会議で明らかにされた。トヨタ自動車が110億レアルの投資を発表した翌日だった。
この巨額投資により、同グループは向こう5年間で40の新製品を発売するほか、バイオハイブリッド新技術の開発、自動車サプライチェーン全体にわたる革新的な脱炭素技術、新たな戦略的事業機会の開拓を推進する。
ブラジルの自動車部門が生産能力の拡大で最大の飛躍を遂げたのは、90年代に行われた市場開放政策の頃だった。当時、自動車メーカーは小型車の生産、技術規模の拡大、現地労働者の育成に力を注いだ。この戦略によりブラジルは世界の四輪生産国ランキングで10位に入った。
2012年、当時のジルマ・ルセフ大統領は保護主義を掲げ、30年までに自動車産業の近代化と競争力強化を図るため、約850億レアルの資金を集めた。しかし、その目的は達成できず、目立った技術的進歩もないまま、同部門は生産能力が需要を上回る過多状態に陥った。
ルーラ政権は2カ月前、自動車メーカーがより安全で低公害の車を製造するための新たな取り組み「緑のモビリティと革新(Mover)プログラム」を開始した。立ち上げ当初は批判の的となったこの計画だが、交渉の中で自動車メーカー各社が約束した投資額はすでに実を結んでいる。
最大の投資が約束されているステランティスの発表を抜きにしても、10社のメーカーが国内で支出する見込み額はすでに650億レアルを超えている。
ステランティスの場合、今回の投資はMoverだけでなく、ペルナンブコ州ゴイアナ市の工場に恩恵をもたらす地域優遇措置の延長に起因している。11月、ラケル・リラ同州知事(民主社会党・PSDB)は、税制改革をめぐるフォルクスワーゲン、GM、トヨタとの競争の末にステランティスが勝ち取った優遇措置の維持により、ゴイアナ工場の操業に少なくとも15億米ドル(74億レアル、2300億円相当)が確保されると述べた。